ニューヨークで開かれた国連の「気候行動サミット」は、日本では例のアホの小泉進次郎が発した「セクシー」だの何だのというわけのわからない発言がまず騒がれた(もちろん海外では嘲笑の対象となった)が、世界的にはグレタ・トゥーンベリさんという16歳の高校生環境活動家の演説がサミットの基調を決定づけたとして話題となった。下記はAFP通信の記事*1。
以下上記リンクの記事を引用する。
「よくもそんなことを」 トゥンベリさん、怒りの国連演説
【9月24日 AFP】スウェーデンの高校生環境活動家グレタ・トゥンベリ(Greta Thunberg)さん(16)は23日、米ニューヨークで開幕した国連(UN)気候行動サミットで演説した。トゥンベリさんは、世界の首脳らが温室効果ガス排出問題に取り組まず、自分たちの世代を裏切ったと非難し、「よくもそんなことを」と怒りをぶつけた。アントニオ・グテレス(Antonio Guterres)国連事務総長が開催した同サミットは、実現が危ぶまれる地球温暖化対策の国際的枠組み「パリ協定(Paris Agreement)」を再び勢いづかせる狙いがある。熱のこもったトゥンベリさんの演説は、サミットの基調を定めるものとなった。トゥンベリさんは「私はここにいるべきではない。大西洋の向こう側に帰って学校に通っているべきだ」と言明。時に声を震わせながら「あなた方は希望を求めて私たち若者のところにやってくる。よくもそんなことができますね」と批判し、「私たちは大絶滅の始まりにいる。それなのに、あなた方が話すことと言えば、お金や永続的な経済成長というおとぎ話ばかりだ。よくもそんなことを!」と怒りをあらわにした。
トゥンベリさんは、気候変動対策をめぐる政府の怠慢に抗議する若者の運動を代表する世界的な「顔」となっている。この運動では20日、世界各地で数百万人の児童・生徒が学校ストを行った。
23日の国連発表によると、パリ協定に応じ、2050年までに温室効果ガスの排出量を実質ゼロとする「カーボンニュートラル」を達成することを約束した国は、66か国に上る。
気候サミットには、当初欠席する予定だったドナルド・トランプ(Donald Trump) 米大統領が急きょ、短時間ながらも出席した。トランプ氏は、地球温暖化が人為的な原因により起きているとする科学界の結論に対し、繰り返し疑念を示している。トランプ氏は会場で、インドのナレンドラ・モディ(Narendra Modi)首相の演説を聞き、拍手をした後に退場した。
グテレス氏はこれに先立つサミット開幕時、「気候の緊急事態は、われわれが現在、負けている競争だが、勝つことのできる競争だ」と述べた。
エマニュエル・マクロン(Emmanuel Macron)仏大統領は、チリ、コロンビア、ボリビアの首脳と会談。会談では、世界銀行(World Bank)、米州開発銀行(IDB)、国際環境NGOコンサベーション・インターナショナル(Conservation International)が、世界の森林保護のため5億ドル(約540億円)を追加で投じると確約した。
(c)AFP/Issam AHMED
(AFP BBニュースより)
この気候変動の深刻さは、私にとっては肌で感じる自明のことだ。この問題はヨーロッパでは深刻な問題としてとらえられているようだが、アメリカでは共和党や同党から選出された大統領・トランプが強硬な地球温暖化否定論者だし、日本ではなぜか「小沢信者」が地球温暖化懐疑論を異様に愛好する。この影響を受けて、小沢一郎の流れを汲む山本太郎も支持者が発する地球温暖化懐疑論に耳を傾けざるを得ない*2という憂慮すべき傾向が見られる。
前のエントリでツイートを引用した平河エリ氏は、この件に関しても多数のツイートを発していて、これらは必見だ。いくつか氏のツイート及び氏がリツイートした他の方のツイートを以下に引用する。まずデータ編。
日本語訳もあるんだからIPCC報告書くらいは呼んでほしい。コンサバな予測だけど日本への影響もわかりやすい。
— 平河エリ(国会ライター) (@yomu_kokkai) September 24, 2019
例えば、海面水位が60cm上昇した場合、三大都市圏のゼロメートル地帯がどの程度水没するか、想像できるか。
これで、果たして経済活動が成り立つとでも?https://t.co/mblbDeDmnN pic.twitter.com/vQ2AdIhI3Z
まずちゃんと最低限、読んでください。要約として環境省がスライドを用意してくれています。https://t.co/9LeEsOa8i7
— 平河エリ(国会ライター) (@yomu_kokkai) September 25, 2019
資料も読まずに「思いつき」で疑問をツイートして、まるでいろんな議論があるかのように主張されるのは、知性的な立場とは言えません。 https://t.co/fuyJyx8mDy pic.twitter.com/4JGZfHt25E
グレタ・トゥーンベリさんに対する懐疑論や醜悪なバッシングが巻き起こったらしいことを、平河氏のツイート及びリツイート経由で知った。
「本当の変人は、力強い世界的ムーブメントを自力で始めた活動家ではなく、安全なコンピュータのスクリーン越しに、アスペルガー症候群の子供をあざ笑う中年男性のほうではないか」
— Plum / プラム (@plumyogamat) September 26, 2019
16歳の環境活動家グレタ・トゥーンベリさんを嫌う大人たち 人格攻撃も https://t.co/6GlfoIyq6v
グレタさんに人格攻撃を仕掛けているのは、何も「崩壊の時代」にある日本のネトウヨや「小沢信者」ばかりではなく*3、世界中の保守派がそうらしい。以下、上記ツイートからリンクされた「NewSphere」の記事を引用する。
16歳の環境活動家グレタ・トゥーンベリさんを嫌う大人たち 人格攻撃も
スウェーデンのグレタ・トゥーンベリさんは、2018年夏に気候変動への対応を政府に求め、学校を休み一人で議会前での座り込みを始めた。その活動が報じられると、共感した若者たちが世界中で学校ストライキに参加。いまやリーダーである彼女は、16歳の環境活動家として大きな注目を浴びている。その一方で、彼女のやり方や影響力の高まりを嫌う心ない大人の誹謗中傷も広がっている。
◆力強いスピーチ、しかし伝わらない大人も
グレタさんは23日、ニューヨークで開かれた国連気候変動サミットでスピーチを行った。涙を見せ、厳しい表情と言葉で大人たちの対応の遅さを批判。若い世代が負わされるリスクの大きさを訴え、若者を裏切るのなら「あなたたちを許さない」と怒りを表した。
そんなグレタさんに対し、アメリカの保守的な政治評論家マイケル・ノウルズ氏は米フォックスのテレビ番組で、「30年以上も(温暖化は)科学で明らかだったのに、なぜ背を向けてきたのか」というグレタさんの言葉に言及し、「科学の問題なら、むしろ科学者がリードすべき。政治家や親と左翼に利用されている精神異常のスウェーデンの子供の仕事ではない」と述べた。ほかのコメンテーターが発言を取り下げるよう求めたが、ノウルズ氏は受け入れなかった(ウェブ誌『デイリー・ビースト』)。フォックスはその後、ノウルズ氏の発言は「不見識」だったと謝罪している。
◆陰湿なバッシング 大人げない大人たち
実はグレタさんは自分がアスペルガー症候群と公表しており、以前から大人による彼女への人格攻撃のような発言がしばしばあった(エネルギーと環境に関するメディア『E&Eニュース』)。彼女を気に入らない人々は、彼女の自閉症に言及。「モノトーンな声」だと指摘し、「世紀末的恐怖のまなざし」を持った「ミレニアル世代の変わり者」と呼んでいたという。
アイリッシュ・タイムズ紙のコラムニスト、ジェニファー・オコネル氏によれば、ツイッター上でのグレタさんへの批判にも驚くべきものがあったとしている。たとえばオーストラリアの保守派の温暖化否定論者アンドリュー・ボルト氏などは、「非常に精神不安定」「異様なほど影響力がある」とコメントしている。意図的に自閉症と関連づける、最も悪意があり、最も愚鈍ないじめがネット上で行われているとオコネル氏は指摘している。
専門家は、このような人格攻撃は、知的障害、発達障害がある人に公の場での発言を思いとどまらせるという深刻な二次的被害につながるとする。大人の「操り人形」だから、という遠回しな表現をグレタさんに使う人もいるが、それは明らかに、彼女の考え方は変わっているのでその発言を無視するべき、というシグナルを特定の集団に送ることになる。自閉症や脳の多様性に関する著書を持つスティーブ・シルバーマン氏は、これは典型的な自閉症バッシングだと述べている(E&Eニュース)。
◆グレタ批判は解決にならず
グレタさんが、今回の会議出席のため、二酸化炭素排出量の多い飛行機を使わず、ヨットでやってきたことに関しても批判がある。米ロングアイランドの新聞ニューズデイのコラムニスト、キャシー・ヤング氏は、数人がこのヨットを持ち帰るために飛行機で戻る予定であることを指摘し、今回のグレタさんの旅は、彼女自身のまばゆい環境ブランドが持つエリート意識と、実用より象徴を好むことを典型的に表したと述べる。グレタさんの活動は疑似宗教的で、パニックを煽るものだとも述べ、今後の科学の発展に期待し、あまりに悲観的になる必要もないだろうと述べている。一方、前出のオコネル氏は、グレタさんのヨットでの旅は抗議行動の一つで、他人に同じことを強要するものではないとする。だからこそ、象徴的であり挑発的であってよいのだとしている。
グレタさんが多くの人々の怒りを買うのは、気候変動が恐ろしいものだとわかっているからだと同氏は指摘し、否定は真実に向き合うよりずっと簡単だと述べている。グレタさんを批判する大人は多いが、本当の変人は、力強い世界的ムーブメントを自力で始めた活動家ではなく、安全なコンピュータのスクリーン越しに、アスペルガー症候群の子供をあざ笑う中年男性のほうではないかとしている。
若さと決意と変化を意味するグレタさんを彼らは怖がっているのだと同氏は述べ、科学を見方につけた彼女にアイデアのない大人は勝てず、彼らがどんなにツイッターやブログで熱弁をふるっても、より大きな問題に取り組む彼女がそれに反応することはないとする。グレタさんは理想主義者であり若さゆえの行動も取るが、彼女のような意見は必要だとし、より穏健な不同意の声は否定することなく、彼女の主張に耳を傾けたいとしている。
(NewSphereより)
豊かな国の子どもが何を言っているのだという誹謗もあるが、気候変動の影響をより強く受けるのが貧困国であることは、考えてみるまでもなく当たり前の話だ。
気候変動により人が最も多く死ぬのは、貧困国です。バングラデシュやインドネシアなどの治水が不十分な国、インドなどの熱く、エアコンが十分に普及していない国。
— 平河エリ(国会ライター) (@yomu_kokkai) September 24, 2019
経済的な脆弱性の高い国家こそ、気候変動に最も影響を受けるのです。 https://t.co/N4TRJhkVM8
こんな話もある。
ところで、グレタは大人の思惑の操り人形だ!というご意見というか根拠のよく分からない陰謀論をちらほら見ますけど、それより、温暖化懐疑論者が石油大手から資金提供を受けていたという本物の陰謀があった事をリマインドしておきますね。https://t.co/xJz2PTQsEr
— leglaneur (@leglaneur1) September 25, 2019
今やネトウヨの代表格になってしまった菊池誠は、この問題でも恥を晒しているようだ。
この人は思想にとらわれ、サイエンティストであることも捨ててしまったのだろうか。悲しいことだ。 https://t.co/Rqm10jTRN2
— 平河エリ(国会ライター) (@yomu_kokkai) September 25, 2019
下記ツイートでこのエントリを閉める。
グレタさんの主張が科学的に妥当すぎて、母親が何を言っただの、金持ちだの、泣きわめいているだの、言い方が共感を呼ばないだの、16歳の少女個人を貶めようと必死なの、控えめに申し上げても、実に醜悪である。
— 平河エリ(国会ライター) (@yomu_kokkai) September 26, 2019
遅くなったので、立花孝志に関する記事は今夜以降(おそらく明日以降)に公開する。
*1:このAFP通信記事の日本語訳では「トゥンベリさん」となっているが、NHKは「トゥーンベリさん」と報じており、ネットで調べたところ、こちらの方がよりスウェーデン語の読みに近そうなので本エントリはNHKの表記に従った。NHKはかつて(1990年代初頭)にスウェーデンのテニス選手だったステファン・エドベリを「エドバーグと発音していたが(朝日・読売など大新聞は「エドベリ」と表記していた)、最近では当初「ワウリンカ」と表記されていたスイスの選手を大新聞より早く「バブリンカ」の発音に変更するなど、現地読みに近い発音にしようと努力する傾向が見られる。なお、「バブリンカ」表記についてはこの日記で取り上げたことがある。https://kojitaken.hatenablog.com/entry/20150201/1422763427