kojitakenの日記

古寺多見(kojitaken)の日記・はてなブログ版

「K値」とは「つねに『早期収束する』としか予言できない、実際の予言能力をもたない」指標(神戸大・牧野淳一郎教授)

 「K値」について、一昨日(7/23)、牧野淳一郎・神戸大学大学院教授(計算天文学専攻)が短文をネットに公開していた。

http://jun-makino.sakuraweb.com/articles/corona/note008.html

 

 リンク先から、数式について解説した前半部分を省略して以下に引用する。

 

(前略)このK値による予測はつねに、「もうすぐ収束する」という楽観的なものになります。 このため、対策しなくても収束すると思いたいメディア、自治体等が取り上げたものと推測されます。

これは、周転円と同じでなんの科学的な根拠もない、というべきでしょ う。そもそもKが指数関数的に減る、ということに(集団免疫が達成されるケー ス以外での)根拠がありません。

思い付きで論文を書くことは自由なので、このような論文があってはいけない、 とはいいませんが、 medRxiv が(レフェリーされていない論文一般に)コメントとしてつけている

It reports new medical research that has yet to be evaluated and so should not be used to guide clinical practice.

(牧野仮訳)この論文はまだ評価されていない新しい医学研究の結果をレポートするものであり、医療の実践を導くことに使われてはならない

を、これを指標・予測に使おうとする自治体当局はちゃんと考慮すべきでしょう。まあ、レフェリー通ってたら信用できる、というものでもありません。

まとめると、K値による「予測」は、その数学的構造から必ず、対策しなくても早期に収束する、という楽観的な予測をだすものになっており、そのため対策が不要、事態は深刻ではない、と信じたいメディアや自治体によって取り上げられる、という構造になっているように思われるが、予測事態はこのためにつねに「早期収束する」としか予言できない、実際の予言能力をもたないものになっている、ということがいえます。

 

出典:http://jun-makino.sakuraweb.com/articles/corona/note008.html

 

 引用を省略した部分に出てくる数式はさして難しいものではない。「仁科記念賞」を受賞したという著名な核物理学者(中野貴志・大阪大教授)なら小手先で簡単にひねり出せそうなものだと思った。核物理学者が、暇つぶしの余技としてか、あるいは何らかの政治的意図を持ってかはわからないが、「K値」なるパラメータをひねり出し、それに、客観性よりも己の願望に一致した数理モデルを求める新自由主義勢力が牛耳る自治体が飛びついたあげく、仮説と現実が全く一致しないで大恥を晒している、というのが現状だろう。

 お粗末の一語に尽きるが、こんなのに多くのメディアが飛びついて宣伝し、首長が新自由主義者である大阪府と神奈川県が採用した。そしてその一人である大阪府知事・吉村洋文をメディアが天まで届かんばかりに持ち上げ、それが先の東京都知事選でも維新推薦の候補が一定の得票を得ることにつながったことを思い出して、暗澹たる気分になった。