各種報道や、「報道」の範疇には全く入らないと私がみなしている「夕刊フジ」や「日刊ゲンダイ」の見出し、それにネットを見る限り、自民党がダッチロールの様相を呈していることがはっきりわかる。自民党は相変わらず安倍晋三と麻生太郎の「2A」が壟断する寡頭制の政党だ。昨年安倍の二度目の政権投げ出しが「反安倍の勝利」かどうかという、当時議論された件については、今回安倍が菅義偉を降ろす「剛腕」を発揮したことで、あの時は安倍が嫌になっただけであって2007年とは正反対に今も党内に強い支配力を持ち続けていることがはっきり示された。つまり昨年の安倍の政権投げ出しは「反安倍の勝利」などではなかった。
しかし、その安倍からも民心が離反しつつあることは、極右夕刊紙の「夕刊フジ」や古いネットニュースサイト(たとえば「J-CASTニュース」など)が必死に高市早苗を後押ししたり「次期自民党にふさわしい人として岸田文雄より安倍晋三の名前を上げる人の方が多い」*1などと必死に宣伝しても、安倍が宣伝する高市は依然として泡沫候補のままだ。結局、「夕刊フジ」や「J-CASTニュース」の読者層が、極右になびき易い中高年男性に極端に偏っていることを示しているだけではないか。時代が大きく変わろうとしていることを感じる。ただ今は、まだそのとば口に立ったばかりの段階ではあるが。
その自民党より一足早くダッチロールに入ったのが、旧民主党右派だった。彼らの一部は国民民主党(民民)にいるが、長島昭久のように自民党に行った人間もいる。そして細野豪志のように、未だに自民党に入れてもらえない人間もいる(笑)。
以下、平河エリ氏のツイートより。
民主党右派は細野幹事長が参院選で壊滅的大敗を喫して以降、ほぼ一貫して政治的には敗北し続けている。
— 平河エリ / Eri Hirakawa『25歳からの国会』(現代書館) (@EriHirakawa) 2021年9月9日
一度たりとも結果が出ていない。
「現実的にならなければ政権が取れない」という空念仏を唱えているけど、共産党の方が時代に対応していて、民主右派が共産党像をアップデートできていない。
面白いと思うのが、社民党の衰退と民主党右派の衰退はほぼ同根だと言うことです。
— 平河エリ / Eri Hirakawa『25歳からの国会』(現代書館) (@EriHirakawa) 2021年9月9日
社民の支持層は未だに「国旗を認めるような立憲民主党と一緒にやれるか!」ってやってて、民主右派の支持層は未だに「共産党と一緒になったら天皇制がなくなる!」ってやってる。
上記ツイートに接して直ちに思い出したのは、ほんの一時期に過ぎなかったが、社民党の福島瑞穂が民民の玉木雄一郎・某組の山本太郎の三者で野合しようとする動きを見せたことだ。社民党は、社会党時代からの共産党との不仲に加えて、自分たちより右に位置する立憲民主党に対する忌避感も、平河氏が指摘する通り持っていると思われるが、だからといって立民よりさらに右の民民や、党名に元号を冠する某組と野合しようとするとはなんという政局音痴かと呆れ返った。私はこれにひどく腹を立てたので、当分、というか福島瑞穂が党首を務めている間は社民党には金輪際投票しないことに決めた。
結局某組は「野党共闘」に加わったが、民民が右方向に外れて行った。福島瑞穂と同様に社民と民民と某組の野合を待望する人たちは、特に旧オザシンや「ヤマシン」の間にも散見されたが、彼らの感想を聞きたいものだ。
平河氏のツイートの引用に戻る。
一時期の民主党もそうですが、負けが混むと煮詰まった人しかいなくなるので負のループに入るんですよ。
— 平河エリ / Eri Hirakawa『25歳からの国会』(現代書館) (@EriHirakawa) 2021年9月9日
すでに影響力がないのに、意地になって現実を認められない。
民主党右派は「左傾化したから党がだめになった」というストーリーにすがり続けて、結局ダッチロールして大半自民に行っちゃった。
上記ツイートに「ダッチロール」という言葉が出てくる。この言葉から、ダッチロールというなら自民党にも当てはまるよなあ、と思って冒頭の文章を書いた次第。
ただ、自民党には長年の蓄積があるので、今回も安倍や麻生を振り捨てて河野太郎を選び、総選挙にも勝ってまたも延命する恐れがある。私がもっとも懸念しているのはこの展開であることは再三書いた通り。維新は「河野太郎の政策はわが党に似ている」と言った。つまり河野の政策は強烈なネオリベだということだ。ネオリベと新型コロナ対策の相性が最悪であることは、今春のコロナ第4波が大阪で医療崩壊を引き起こし、多数の死者を出したことや、国政でも菅義偉がGoToやオリパラをゴリ押しして8月に56万人もの新規陽性者数を叩き出したことなどにはっきり示されている。
三たび平河氏のツイートに戻る。
ある国政選挙で落選した候補者に敗因を聞いたことがある。
— 平河エリ / Eri Hirakawa『25歳からの国会』(現代書館) (@EriHirakawa) 2021年9月9日
彼は「共産党が乗っかってきたから中道の票が離れた」と言っていた。
冷静に分析したらそうはならないでしょう。ファンタジーですよ。
これで思い出すのは、2016年の参院選で民進党が負けたのは「民進党が左傾したせいだ」と細野豪志や長島昭久らが言っていたことだ。細野らは本気でこのドグマを信じていたらしく、「希望の党」政局へと突き進んでいったが、小池百合子*2ともども壮大に自爆した。
「勝つか負けるかはどうでもいい、共産党と一緒にやらないのがアイデンティなのだ」と現実を認識できているならともかく、民主右派は未だにこの「共産と組むと票が逃げる」というストーリーに本気ですがっている。
— 平河エリ / Eri Hirakawa『25歳からの国会』(現代書館) (@EriHirakawa) 2021年9月9日
そこに大きな問題がある。イデオロギーではなく戦略でそれをやってると信じている。
玉木雄一郎などの「民主右派」が、未だに「イデオロギーではなく戦略で」「『共産と組むと票が逃げる』というストーリーに本気ですがっている」というのは興味深い指摘だ。私などももういい歳だが、確かに私の親の世代、つまり80代以上の高齢者たちには「共産と組むと票が逃げる」という表現がぴったり当てはまる人たちが多かった。共産党というと「怖い」「危険思想」という言葉が反射的に出てくる。私は子ども時代からそれが不思議でならなかった。私が社会人になった1986年に最初に部署のボスだった人(1936年頃の生まれ)もまさしくこのパターンで、彼が「危険思想」という言葉を発した時、3歳年上の先輩社員が失笑したことをよく覚えている。この元ボスは健在なら今年で85歳になる。こういう人たちが日本の人口に占める割合は急速に小さくなってきている。
共産党を巡る路線対立は、イデオロギーの対立というより、現実を認識できているか、2010年代のゲームチェンジを理解しているかという点にある。
— 平河エリ / Eri Hirakawa『25歳からの国会』(現代書館) (@EriHirakawa) 2021年9月9日
残念ながらそれに対応できなかった政治家や政党はどんどん居場所を失っていく。
中村喜四郎先生が共産党の党大会に出たり、「あの」松原仁先生が生理政策について言及したりする時代に、現代的なレジームに対応し、感覚をアップデートできないのはとてももったいないと思いますけどね。
— 平河エリ / Eri Hirakawa『25歳からの国会』(現代書館) (@EriHirakawa) 2021年9月9日
時代に対応しようとしているのが中村喜四郎やすぎやまこういちに「ジンジンジン」の応援歌を作ってもらった松原仁や「加藤紘一邸の放火を笑いものにした」稲田朋美らであるのに対し、対応できないのか単に感覚が鈍いのか、全く変わろうとしないのが山谷えり子や高市早苗なのだろう。
そう遠くない将来、「夕刊フジ」は廃刊に追い込まれるかもね(爆)