日本国内で新型コロナウイルス感染症の第5波が急激に減衰した理由は、専門家にもよくわからないという。
この件から思い出したのは、昨年読んだ宮坂昌之著『新型コロナ7つの謎』(講談社ブルーバックス,2020)に書かれたSARSに関する記述だ。同書には「なぜ感染流行が止まったのかはわかっていません」(22頁)と書かれている。
弊ブログがよく引用する黒木登志夫著『新型コロナの科学』(中公新書,2020)には下記のように理由が(定性的に)書かれている。
急激な進行、そして高い致死率が、結局SARSウイルスの収束を早める結果となった。SARSの患者は、コロナ感染者のように動き回って感染を広めることはできず、死に至る。ホストがつぎつぎに死ぬと、ウイルスは生きる場を失い、自らも消え去るほかにない。かくして、SARSウイルスは自滅した。2003年7月5日、WHOはSARSの収束を宣言した。ウルバニが感染してからわずか4ヵ月と5日で、SARSはわれわれの前から姿を消した。(同書31頁)
しかし、世界的にはアメリカやイスラエルで今月に入ってようやくデルタ株による波が減衰し始めたばかりだし、イギリスでは高止まりしている。デルタ株の感染力が強く、ワクチンがなければ致死率も高かっただろうけれども、いずれもSARSほどではないから、第5波が確実に減衰しているからもう大丈夫というわけにはいかないだろう。
先週は2日も祝日があったから、新型コロナの新規陽性者数及び死亡者数のデータには攪乱要因が入ってしまっている。今週分も先週分との比較があてにならないので、今回と次回はデータについてはグラフと数字を並べるにとどめざるを得ない。データはいつものようにNHK*1による。
9月18日(土)から9月24日(金)までの1週間の新規陽性者数は21,022人(前週比52.3%減)、死亡者数は322人(同20%減)だった。新規陽性者数は4週連続、死亡者数は2週連続でそれぞれ減少した。現在は第5波の感染後期にある。今週のみかけの致死率は1.53%で、以前フジテレビが宣伝した「致死率0.12%」の12倍以上に達した。もちろんいずれの数値にも意味はない。9月24日現在の第5波の致死率は、仮に8月1日以降の死亡者数を7月1日以降の新規陽性者数で割ると0.25%だが、最終的には0.3%か、それを少し超える程度になろうかと思われる。