朝日新聞の情勢調査は、大まかには外れませんでした。オートコールが主流のなかで唯一、異なる数字が出ましたが、朝日の矜持はあらかじめ準備した予測モデルの数字を、思い込みでゆがめないこと。世論調査部に数学の専門家を擁する朝日ならではの手法です。いずれ理解される日が来ると信じます。
— 前田 直人 (THE ASAHI SHIMBUN) (@Nao_Maeda_Asahi) 2021年10月31日
「世論調査部に数学の専門家を有する朝日ならでは」か。
今回の小選挙区での接戦みたいに、1から0へと大きく変化するアバランチ(雪崩)が起きる領域で精緻なモデルを立てて結果を予測することは非常に難しいはずだ。私自身はそれに関する数学的な仕事をやったことはないが、1から0へと大きく変化する領域での実験の仕事ならやったことがあるから、相当に難しいであろうことは感覚的にではあるがわかる。今回の朝日はそれをやってのけたといえるかどうかは、今後も今回と同様に他社の追随を許さない結果を出せるかどうかで評価したいが、運ではなく実力でやってのけた可能性があるとは思う。
少なくとも、政治記者たちの思い込みで調査結果を歪めさせなかったことは高く評価しなければならない。
手元に10月26日付朝日新聞の現物があるが、維新を除く全政党の議席が朝日の予想の範囲内に入っている。そのうち立民は朝日の予想の94〜120に対して結果が96議席、共産は朝日の予想の9〜21に対して結果が10議席と、いずれも下限ギリギリに近いが、それでも予想の範囲に入っている。また某組が近畿ブロック最後の1議席を獲った場合に3議席になるが、これも朝日の予想の0〜3議席の上限値だ。ただ維新だけは朝日の予想25〜36議席に対して40議席だった。なお残り3議席の結果が未確定の時点でこの記事を書いている。
しかし重ねて書くが、アバランチ(雪崩)が起きる領域で勝ち負けを競い、ちょっと得票率が違うだけで議席数が2対8から8対2に変わってしまうような選挙制度が民意を正しく反映しているとは、私には絶対に思えない。
結果が与党の勝ちだったからこんなことを書くのではない。それが証拠に、昨日午後、まだ投票が進んでいる段階で「一つだけ忘れないうちに書いておこう」と、小選挙区制のギャンブル性を批判する記事を書いて公開した(下記リンク)。この記事での批判は、与党と野党共闘のどちらが勝った場合に対しても適用されることはいうまでもない。
ただ、上記記事中で朝日と読売その他の調査を同列に扱ったことは、結果的に誤っていた可能性がある。
それにしてもあまりにも極端な結果だった。小選挙区制をベースにした現行の衆院選の選挙制度は再改変されなければならないとの信念を、今回の衆院選でますます強めた。