ロシアのウクライナ侵攻及び国会のロシア非難決議案に対する某元号組の反対については、昨夜公開した下記記事にいただいたにっしーさんのコメントに尽きる。
「先に攻撃した国が一番悪い」という原則は、よっぽどの例外を除いてその通りだと私も思う。
時期が2月だったこともあって、私が思い出していたのは1979年2月に中国がベトナムを侵攻した一件だった。この件はもちろん例外には当たらない。
私が思いつく「よっぽどの例外」は、1978年末から翌1979年初めにかけてのベトナムによるカンボジア侵攻だ。侵攻開始が11年後の1989年にチャウシェスクの命日になる12月25日で、プノンペンの陥落が10年後の同じ1989年に昭和天皇の命日になった1月7日だった。当時のベトナム政府の思惑まで正当なものだったとは思わないが、国内で大虐殺をやっていたポル・ポト政権が倒されたことで大虐殺は強制的に止められた。
どうやら陰謀論にすっかり神経をやられてしまったらしいプーチンの脳内では「ウクライナ政府＝ネオナチ」ということになっていて、だから自国のウクライナ侵攻はポル・ポトのカンボジア政府を倒したベトナムの侵攻と同じだと考えているのかもしれない。しかし「元コメディアン」という、山本太郎を連想させる経歴*1を持つゼレンスキーは国内で虐殺などやっていない。ダリア・ビロディナは普通に生きているし、ナディア・コマネチがチャウシェスク一家に囲われていたらしいことに類する話も聞かない。
実際の戦争においてもロシア軍の士気は低く、ウクライナ軍の士気は高いと伝えられる。しかし士気云々という言葉自体に私は違和感を持つ。というのは、歴史を思うと東京軍が大阪に侵攻したようなものだからだ。
北欧のクラシック音楽でいうなら、帝政ロシアの圧政に対する苦悩を第2楽章で描いて、フィナーレで革命によるロシア打倒を夢想して書かれたであろうフィンランド人・シベリウスの交響曲第2番*2を、今回の戦争からは決して連想できない。そうではなく、キエフといえばムソルグスキーの「展覧会の絵」のフィナーレを飾る「キエフの大門」であり、ウクライナといえばチャイコフスキーの交響曲第2番「小ロシア」だ。後者は実はあまり馴染みのない曲でメロディーも全く思い出せないが、6曲あるチャイコフスキーの交響曲の中でももっとも明るい曲とされているらしい。
東京のプロ野球チームには「軍」の名で呼ばれ、そのせいもあって弊ブログが日本語の愛称をNGワードにしている球団があるが、その球団と阪神タイガースとが「宿命のライバル」だとかいっても、だからといって東京と大阪との戦争に結びつこうはずもない。もっとも、1976年の日本シリーズで阪急ブレーブスが読売を破った時、大阪の飲み屋で祝杯を挙げていた阪急ファンを読売ファンが殺した一件があって、それが毎日新聞の大阪本社版に報じられたことを覚えているが、普通の人間はそんなことはやらない。
しかし、直近のニュースの数々から感じられることは、どうやらプーチンには「1976年に阪急ファンを殺した読売ファン」的なところがあるのではないかということだ。
これこそ核抑止論の致命的な問題点だ。核ボタンを押す権限を持っている人間がいかれてしまったらどうなるかという問題である。
欧州では「プーチンは核ボタンを持ったヒトラーだ」と言われているとのことだが、間違っても笑い事ではない。明日にでも人類の歴史は終わってしまうかもしれない。
そんな時に「他の野党を叩くポジションどりに抗議決議を利用している」とこたつぬこ氏に評されたという某元号組は言語道断というほかない。
2022/02/28に、"某元号組"は公式サイトで声明を発表しました。ニュース記事には書かれていない、声明の具体的な内容が書かれています。
【声明】ロシアによるウクライナ侵略を非難する決議について
https://reiwa-shinsengumi.com/comment/11439/
この声明で、私が特に問題だと思った箇所はこちらです。
＞・今回の惨事を生み出したのはロシアの暴走、という一点張りではなく、
米欧主要国がソ連邦崩壊時の約束であるNATO東方拡大せず、を反故にしてきたことなどに目を向け、この戦争を終わらせるための真摯な外交的努力を行う
戦争における言論の原則。
「先に攻撃した国が一番悪い」
「先に攻撃した国を全面的に非難し、攻撃された国を全面的に擁護すること」
今回の件では、ロシアを全面的に批判して、ウクライナを全面的に支持しなければならず、声明の言葉を使うと、国際社会は「『今回の惨事を生み出したのはロシアの暴走、という一点張り』」を前提にして意見を言わなければならないのです。
その点で、"某元号組"の声明は最悪だと私も思います。