プーチンの周囲にはイエスマンばかりしかいなくなったので、都合の悪い情報が挙がってこないとの話が出てきている。主にアメリカから言われている話なので真偽のほどは定かではないが、仮に本当だとしたらますます大日本帝国の末期に似てきた。
何度も書くように、私は1月から2月にかけて大岡昇平の『レイテ戦記』中公文庫版全4巻を何度も気を滅入らせながら読み通したが、大日本帝国の陸軍は1944年10月の台湾沖航空戦に「大勝利」の戦果を挙げたという大本営発表を鵜呑みにしてレイテ戦の作戦を立てた。もちろん海軍は台湾沖航空戦に敗北した事実を知っていたが、陸海軍の仲が険悪だったために情報が陸軍に伝わらなかった。その結果、レイテ戦に送り込まれた日本軍兵士の94%が死ぬという悲惨な戦いになった。なお大岡昇平はレイテ島ではなくミンドロ島に送られたため、レイテ戦には参加していない。
独裁政権の末期はどの国でもどの時代でも同じようなものなのかもしれない。
ウクライナの首都キエフの日本語の呼称はキーウに代わった。かつての阪神タイガース暗黒時代初期のエースにして、1987年にヤクルトとの開幕戦に先発して敗戦投手になった故マット・キーオ*1を連想させる名前だが、キエフをキーウと呼ぶなら、なぜ北京をペキンと呼ぶのか等の疑問は尽きない。日本国内でも名古屋や仙台や高知その他の地名は、標準語で報じられるニュースでは現地読みと異なるアクセントが使われている*2。また、現地では「まいはら」と発音される滋賀県の米原は、米原町から米原市になる時に自ら読みを「まいばら」に変えてしまった。
野球や方言の話はどうでも良い*3、チェルノブイリ原発を攻撃したロシア軍の兵士に放射線の被曝による死亡者が出たとの情報がある。
チェルノブイリでの塹壕の被爆でロシア兵からとうとう死者が出たと。 https://t.co/RFWuzBY36H
— kazukazu88 (@kazukazu881) 2022年4月1日
このチェルノブイリも、NHKはウクライナ読みのチョルノービリに改めている。下記はロシア軍兵士死亡のニュースではないが、チェルノブイリからロシア軍の大部分が撤退したのではないかとのNHKニュース。
2022年4月1日 5時09分
ウクライナの原子力発電公社、エネルゴアトム社は3月31日、ロシア軍が占拠していた北部のチョルノービリ原子力発電所、ロシア語でチェルノブイリ原子力発電所や周辺の施設から、大半が撤退したとみられると発表しました。
エネルゴアトム社はSNSで、ロシア軍について「ベラルーシとウクライナの国境に向かって2列で移動していることが確認された」と投稿し、部隊の大半は撤退し、数人が残っている状況だということです。
また「けさ、ロシア軍はチョルノービリ原発をウクライナの職員に任せる意向を示した」とも投稿しています。
1986年に事故が起きたウクライナのチョルノービリ原子力発電所は、ロシアがウクライナへの軍事侵攻を始めた2月24日に、戦闘の末、ロシア軍に占拠され、技術者の交代の見通しが立たなくなる事態が起きるなど、IAEA=国際原子力機関が安全への懸念を繰り返し示していました。
IAEA=国際原子力機関のグロッシ事務局長は3月31日、声明を発表し、チョルノービリ原子力発電所、ロシア語でチェルノブイリ原子力発電所を占拠していたロシア軍が、原発の管理をウクライナ側に戻したと、ウクライナ当局から連絡を受けたことを明らかにしました。
声明によりますと、ロシア軍は一部が原発を去り、ベラルーシに向かって移動したということで、原発に残るロシア軍も撤退の準備をしているとみられるということです。
IAEAは近く、原発に支援チームを派遣することをウクライナ側と協議しているとしています。
チョルノービリ原発では技術者の交代ができなくなる事態が起きていて、IAEAが繰り返し安全への懸念を示してきましたが、今回の声明でも、交代が行われたとの情報は寄せられていないとしています。
また、グロッシ事務局長はロシア側との協議のため31日からロシアを訪れていて、4月1日に本部があるオーストリアのウィーンに戻り会見を開くとしています。
※ウクライナの首都、キエフなど、NHKは一部にロシア語に由来する地名を用いてきましたが、原則としてウクライナ語に沿った呼称に改めました。
(NHKニュースより)
出典:https://www3.nhk.or.jp/news/html/20220401/k10013562281000.html
そういえば10年前に「脱原発」をウリにして政界入りした山本太郎はロシア軍の原発攻撃について何か言ったのだろうか。
何も日々山本からの情報発信に目を光らせているわけではないが、仄聞するところによると山本はますます陰謀論的体質を強めているらしい。
「れいわ新選組の山本太郎代表も3月24日の記者会見で、プーチンが「ウクライナの非ナチ化」に言及した際には何を言っているのかさっぱりわからなかったが、ウクライナの歩みを調べたところ、欧州の公的機関や人権NGOの公式文書だけでもネオナチの実態が見えてきたと説明」 https://t.co/jZbynqJkjt
— こたつぬこ🌾野党系政治クラスタ (@sangituyama) 2022年4月1日
最近全然みてなかったが、山本太郎の陰謀論は加速してるんじゃないのかな。反ワクチンからネオナチへ https://t.co/bV4k8EpEqf
— こたつぬこ🌾野党系政治クラスタ (@sangituyama) 2022年4月1日
上記2件のこたつぬこ(木下ちがや)氏のツイートの1件目に、朝日新聞社をおん出て個性を存分に発揮するようになった鮫島某のサイトがリンクされている。
いかにも鮫島らしいぶっ飛んだ記事だが、一部を引用する。
欧米メディアは「プーチン=悪、ゼレンスキー=正義」の善悪二元論一色に染まり、ひたすらロシア批判を繰り広げるばかり。そしてロシア発の情報や、ロシア側からみた戦争の解説にすべて「フェイクニュース」「陰謀論」のレッテルを貼り、欧米発のプロパガンダばかりを喧伝しているのである。ワクチン報道とそっくりだ。
バイデンをはじめ米民主党がウクライナ内戦に介入して親米政権を樹立してきたこと、親米政権で極右勢力(ネオナチ)が跋扈しウクライナ国内のロシア系住民に蛮行を重ねてきたこと、そのウクライナ政府に米国は大量の武器を支援して軍事的緊張を高めロシアを挑発してきたこと、それらバイデン政権にとって不都合な事実はほとんど報じない。
これでは一般の人々がウクライナ戦争の構図を客観的に理解することは不可能であろう。社会全体が「ロシア=悪、ゼレンスキー=正義」という善悪二元論に包まれるのも無理はない(だからといってロシア軍の侵攻を肯定するものではないが、米国を後ろ盾としたウクライナ政府の失政や人権軽視に目を閉ざし、一方的に称賛することには甚だ疑問だ)。
この背景にはトランプがプーチンと連携し、バイデンがウクライナと連携してきたという政局構図がある。つまり欧米メディアは「トランプ=プーチンの悪の枢軸」だけは絶対に許さず、だからこそ、ウクライナの人々の命を守るために一刻も早い停戦合意を目指すことよりも、ロシアへの経済制裁を強化してプーチン政権の転覆を目指すことを優先するバイデンを強く支持し、彼とウクライナの疑惑に目を塞いでいるのだろう。
このような姿勢は、現在の国家権力を最も強く監視すべきであるというジャーナリズムの原則に反していると私は思う。その是非は欧米の人々が判断すればよいことだが、私たちは欧米メディアのウクライナ戦争をめぐる報道を鵜呑みにせず、慎重に見極めなければならない。もちろんロシア発の報道も同じだ。戦時国家が発表する内容はすべてプロパガンダ、大本営発表と割り引いて受け取ることが何よりも肝要である。
まず、欧米メディアに限らず日本のメディアや国内の多くの人々の意見発信が「『プーチン=悪、ゼレンスキー=正義』の善悪二元論一色」に染まっているとする鮫島の認識が誤りである。
私の見るところ、「プーチン=悪、ゼレンスキー=正義」とする意見も確かにあるが、多くは「ウクライナを侵略したロシアの最高指導者・プーチン=悪」とするものだ。弊ブログも第2次世界大戦でローズベルトやチャーチルに問題がなかったはずがないし、大日本帝国に侵略された中国の国民党政府は腐敗していたから毛沢東率いる中国共産党との内戦に敗れたと書いた。無論、それが大日本帝国を免責する理由にはならないし、そのアナロジーでウクライナにアゾフ大隊などの極右が存在することをもってプーチンの罪一等を減じる理由にはならないという意味である。ところが、頭に血が登ってその程度の含意すら読み取れない頭の悪いマッチョな権威主義者と思われる人間が、かつて支持していた共産党の民主集中制への信奉をかなぐり捨てて「お前はゼレンスキーを美化している」などと事実に反する言いがかりをつけてくるのだから頭痛がする。
鮫島のクソ記事に戻ると、引用部分の後半で「欧米メディアは『トランプ=プーチンの悪の枢軸』だけは絶対に許さず」などと書いているのが笑える。鮫島は植草一秀らと同様のトランプ支持者ではないかと疑われる。いうまでもなく植草は今回もウクライナ攻撃に血道を挙げている。植草は明白に孫崎享や鳩山由紀夫と同系列の人間である。そして山本太郎もまた、かつて師事した小沢一郎よりも、鳩山・孫崎・植草に近い心情の持ち主ではないかと強く疑われる。
なおウクライナにアゾフ大隊を初めとする極右が存在することは事実だし、自身はプーチンを信奉しているブラジルのボルソナロが国を挙げてのロシ支持に踏み切らなかった理由として、ボルソナロ政権内にロシアの極右とつながる者とウクライナの極右とつながる者の両方がいて意見が一致しなかったためだの記事を読んだことがある。
ただ、プーチンとゼレンスキーのどちらがより強く極右と結びついているかというと、それは圧倒的にプーチンの方だろうというのが私の心証だ。
鮫島の記事からの引用を続ける。山本太郎に言及したくだりだ。
ちなみに、れいわ新選組の山本太郎代表も3月24日の記者会見で、プーチンが「ウクライナの非ナチ化」に言及した際には何を言っているのかさっぱりわからなかったが、ウクライナの歩みを調べたところ、欧州の公的機関や人権NGOの公式文書だけでもネオナチの実態が見えてきたと説明していた。れいわはそこまで調べ上げたうえでゼレンスキー政権に一方的に加担する国会決議に反対したのである。
欧米メディアがバイデン政権のプロパガンダに乗っていると指摘したが、それでも欧米のジャーナリズムはやはり幅広い。『JFK』『ニクソン』『ウォール街』『スノーデン』など数々の社会派映画で知られる米国の映画監督オリバー・ストーン氏が、インターネット討論番組で現在のウクライナ情勢について見解をのべた内容が「長周新聞」に紹介されている。
出た! 「長周新聞」!!
言わずとしれた山口県に本社を持つ「日本共産党(左派)」、つまり民主集中制に違反して日本共産党から分派認定を受けた毛沢東主義者の準機関紙で、現在は山本太郎と×××新選組の準機関紙でもある。
鮫島は朝日新聞ではなく最初から長周新聞に就職すれば良かったのにね。
なお、長周新聞が言及したオリバー・ストーンの見解は3月12日に発信されたものだが、鮫島とは違って現在も朝日新聞論説委員を務める駒木明義記者によると、ストーンもロシアのウクライナ侵攻を批判する立場に転じたらしい。
ちなみにオリバー・ストーン監督も、ウクライナ侵略を批判しています。
— Akiyoshi Komaki 駒木明義 (@akomaki) 2022年4月1日
プーチン氏と親しい仏名優が侵攻を批判「受け入れがたい狂った行動」:朝日新聞デジタル https://t.co/3JvyOYYmpa #ウクライナ情勢
オリバー・ストーン監督のFB投稿。
— Akiyoshi Komaki 駒木明義 (@akomaki) 2022年4月1日
Although the United States has many wars of aggression on its conscience, it doesn’t justify Mr. Putin’s aggression in Ukraine.
ただし全体としては、かなりプーチン氏に未練がましい印象。https://t.co/JdRyf7hPWa
まぁ、自分の過ちに気づいて、立場を変えるのは正しく勇気があることなのでオリバー・ストーンもジェラール・ドパルデューも立場変更は賞賛されるべきだけど、ただ過去の自分の言葉や作品がまだプロパガンダに使われているので、過去の自分の言動をしっかりと徹底的に否定して欲しい。
— kazukazu88 (@kazukazu881) 2022年4月1日
実は弊ブログもかつてオリバー・ストーンの『オリバー・ストーンが語るもうひとつのアメリカ史』を好意的に取り上げたことがある。ハヤカワ文庫の3冊本読んだのはいつのことだったか覚えていなかったので読書記録で確認すると2016年だった。そんな経緯があるから、ストーンの現状に「あちゃあ」と思っていたが、立場を変えてくれて良かった。もちろん総括が必要だろうが。
現在では『世に倦む日日』のブログ主が日々、オリバー・ストーンの名前を連呼している。同氏もそうだが、山本太郎もそろそろ年貢の納め時ではなかろうか。まあ元号を党名に冠する政党の独裁党首に相応しい末路をたどっているといえばそれまでだが。
それにしても、ロシア軍の原発攻撃について何も言わない山本太郎や、その山本に何も言わない(言えない)ヤマシンや×××新選組の関係者及び支持者たちは、見下げ果てたものとしか言いようがない。