kojitakenの日記

古寺多見(kojitaken)の日記・はてなブログ版

「大外れの『K値』を『注目している』とオーソライズした吉村洋文知事の罪」(リテラ)

 私はリテラをあまり評価しないが、7月27日に中野貴志・阪大教授が提唱した「K値」を批判した記事を公開していたので紹介する。

 

lite-ra.com

 

 上記記事の最初の2頁で、大阪府知事・吉村洋文が「大阪モデル」の基準を変えまくったことなどが批判されているが、「K値」批判が出てくるのは3頁目なので、その部分を以下に引用する。

 

大外れの「K値」を「注目している」とオーソライズした吉村洋文知事の罪

 

 いや、吉村府知事の「罪」は「大阪モデル」だけではない。それは「K値」の問題だ。


 「K値」というのは感染の収束時期を予測する指標で、中野貴志・大阪大学教授が提唱しているものだが、現在の「第2波」についても「7月9日ごろにピークアウトする」(「週刊新潮」7月16日号/新潮社)などと予測。結果はご覧の通り、思い切り外しているわけだが、吉村府知事は5月14日の段階から〈「K値」は僕も注目してる〉〈阪大の中野教授の意見を府の専門家会議で聞く準備に入る〉などと言い出し、実際に6月12日には大阪府の専門家会議に中野教授と宮沢孝幸・京都大学ウイルス・再生医科学研究所准教授をオブザーバーとして参加させた。そして、この席で中野教授と宮沢准教授は「(緊急事態宣言の効果は)極めて限定的。経済を止める必要はない。止めても新型コロナは止まらない」「(感染の)収束は緊急事態宣言後の自粛によるものではないのは明白」と主張した。


 こうした主張に対し、吉村府知事は仰々しく天を仰いでみせただけでなく、会議後の会見では“接触8割減”を提唱した西浦博・北海道大学教授の数理モデルについて、「国を挙げて批判的検証をしないと間違った方向に進むんじゃないか」と疑義を呈したのだ。


 感染症の専門家でもない中野教授の「K値」は、「自粛に意味はない」という経済活動を最優先したい為政者にとってはおあつらえ向きの指標だ。そこにいち早く飛びつき、あたかもこの指標が正しいかのように喧伝した行為の責任は重い。吉村府知事は最近も「K値もズレてきてますから、K値がズレてきているということは、何らかの新たな発生源ができていると見るべきだと思っています」(17日放送フジテレビ『直撃LIVEグッディ!』)などと述べているが、この期に及んで「K値」などと言っている場合ではないだろう。


 現に、大阪府は吉村府知事による「大阪モデル」の修正に次ぐ修正で、危機に対応できるのか不安視されている。現在、大阪府は重症者の病床を188床確保しているというが、26日時点での使用率は5.9%。「赤色」になる基準は「重症者の病床使用率が70%以上」であるため余裕があるように思えるが、大阪府医師会の茂松茂人会長が「このモデルではかなりひどい状況になってから点灯する」(毎日新聞23日付)と述べているように、そこから自粛要請をかけても焼け石に水、手遅れの状況に陥っている可能性が高いのだ。


 しかも、このような状況下にありながら、吉村府知事は驚くべきことに「大阪都構想」の実現に邁進。21日には大阪維新の会の全体会議を開き、11月1日の住民投票に向けた運動方針を決定。8月から「賛成」を呼びかける街宣活動や集会などの広報活動をスタートさせるというのだ。


 コロナ対応に全力を傾けるべき局面で「都構想」運動を開始する──。「大阪モデル」における「緊急事態」となる「赤色」基準のハードルを手遅れ並に高くしたのは、経済活動の優先もさることながら、この住民投票に向けた広報活動などに批判が集まらないようにするためではないのか。


「コロナ対応でリーダーシップを発揮」などと持ち上げてきたメディアは、いまこそ吉村府知事の対応を検証し、自分たちが無批判に担いできたことを反省すべきだ。
(編集部)

 

(リテラ 2020年7月27日)

 

出典:https://lite-ra.com/2020/07/post-5544_3.html

 

  ここで引用されている6月12日の大阪府の専門家会議については、ネットで知り、TBSのnews23でも取り上げられたのを見たが、後者はおそらく大阪のMBS毎日放送)発の提灯ニュースをTBSが無批判に取り上げたものと思われ、星浩のコメントも歯切れの悪いものだったのでむかついた覚えがある。

 本当はこの時にもっとこの件について掘り下げて調べ、「K値」についても知識を得て、ブログで批判できれば良かったのだが、私はこの専門家会議をブログの記事にもしなかった。そのため、単に私個人が吉村に対して不快感を持っただけで終わってしまった。今にして思えば痛恨事だ。

 だがその当時の私に限らず、リベラル・左派界隈では未だに「K値」に対する問題意識はそんなに強くないのだ。それどころか「42万人も死んでいないじゃないか」と、ネトウヨと同じことを言うリベラル・左派の人士も少なくなかった。いや、今でも少なくない。

 リベラル・左派ではないが、昨日この日記で取り上げた上久保誠人氏も、42万人という数字に根拠が示されていないとの難癖をつけていたが、ちょっと調べただけで、この数字は、基本再生産数が2.5の場合に集団免疫を獲得した時の感染率、感染者の重症化率、それに重症者の死亡率という3つの変数*1についてそれぞれ定説とされる代表的な数値を、人口に掛け合わせたものであることがわかるはずだ。

 西浦教授が「42万人」という数字を出した頃には集団免疫獲得時の感染率は60%とされていたが、その後同教授は「60万人という数字は大きすぎる。20〜40%くらいではないか」と言っているから、今なら「14〜28万人」あたりを想定しているのではないかと推測される。現時点での死亡者は約千人だから、感染率は1%にも達していないことになる。つまり、感染が拡大する余地はめちゃくちゃに大きいのだ。そんな状態なのに、何もしなくとも新型コロナは勝手に収束すると言わんばかりの「K値」理論が、かなりよく当てはまるらしい感染収束段階ならともかく、全く実績のない感染拡大段階にまで無理に当てはめようとして大火傷をしたのが、今回の「K値」騒動だろう。それは、「経済を回し」たい為政者の願望に合致しているだけの「自分にとって都合の良い」モデルに飛びついたという、リスク管理においては絶対にやってはならない行為だった。

 大阪府はK値を参考にしたものの、府のオフィシャルな指標として認定してはいないのだそうだ。それなら現在無策を続けている安倍政権も、実質的に大阪府と同じことをやっていることになる、というか実際にそうなのだろう。

 それで良いのだろうか。まさかそんなはずはない。だが現実にはそうなっている。それは、ジョンズ・ホプキンズ大のダッシュボードで、日本、韓国、中国、アメリカ、ブラジルなどの累積陽性者数のグラフを見比べてみれば一目瞭然だ。今の日本は、韓国や中国とは異なり、かつトランプのアメリカやボルソナロのブラジルと同じ路線をとっているようにしか見えない。

 私の場合、このところ感じる恐怖は、緊急事態宣言発令前後のそれよりずっと深刻だ。だが、職場の周囲の人と話してみると、かつての緊張感を緩めている人の方がずっと多い。

 K値の話からだいぶ逸れてしまったが、K値とは日本をこのような道に引きずり込んだ悪しき「占い」のようなものだった。大阪府民は吉村洋文の、日本国民は安倍晋三の責任を厳しく問うべきだし、リテラも書いている通り吉村を持ち上げた(特に在阪の)マスメディアは検証と反省をすべきだが、それらはなされないだろう。

 気が滅入るばかりだ。

*1:実際には年齢層別に細かく計算されたもののようだ。

「日本では新型コロナウイルス感染症の致死率が低い」という俗論が性懲りもなく再発した

 昨日「週刊文春」の最新号を立ち読みしていたら、またぞろ「日本では新型コロナウイルス感染症の致死率が低い」などと書かれた文章に遭遇したので頭痛がした。

 まだそんなことを言っているのか。春先に流行ったもののその後否定された議論が、またしても蒸し返されている。いったい同じ誤りを何度繰り返すのか。

 下記に当日記の5/31の記事をリンクする。

 

kojitaken.hatenablog.com

 

 以下引用する。

 

 日本国内での新型コロナウイルスによる死亡者数は、ようやく1桁の日が続くようになってきた。昨日(5/30)は5人で、致死率は5.30%になった。5月30日に5.30%という覚えやすい数字だ。もっともこれはNHKの報道によるもので、厚労省発表の数字とは合わない(厚労省の認定がいつも遅れるため)。致死率は先月末に3%を突破したが、5月の1か月間だけで2.3ポイントも上昇した。死亡者数は確認される陽性者のピークよりもかなり遅れる上、ブロードなピークになることはよく頭に入れておく必要があるだろう。感染拡大の初期段階における致死率の低さには何の意味もない。ましてやそれを感染拡大のピークを過ぎた国と比較して「日本の医療の優秀さの表れだ」などと誇らしげに言っていた論者たち(主にネトウヨ)は赤恥をかいた。実際には日本の致死率は中国(約5.5%)やフィリピン(同じく約5.5%)を除く他の東アジア諸国よりも高くなった。致死率はPCR検査体制整備の度合いと医療体制の水準で決まると考えられるが、日本の場合は検査体制があまりにも貧弱なのだった。

 

出典:https://kojitaken.hatenablog.com/entry/2020/05/31/084317

 

 重症者数や死亡者数は「遅行指標」なのだ。この点をよく頭に入れておかなければならない。

 

 また、同じく当日記の6/2付記事より。

 

kojitaken.hatenablog.com

 

 北九州市の陽性者が増加した原因として、感染のぶり返しのほかに、PCR検査数を増やしたことによって、これまでは発見できなかった陽性者を発見できるようになったことが挙げられる。もちろんこれは良いことであって、「検査数を増やせば医療崩壊」などという、ひところネトウヨを中心として流布していた俗論の方が完全に崩壊した形だ。

 各地で同様の検査数拡充がなされるようになれば、陽性者の捕捉率が上がり、致死率は下がることになる。だから、致死率のレポートの記事を毎日公開するのは、今回で止めることにしよう。5月末の時点の致死率5.3%という数字を、今後第2波まで(マスメディアの報道によれば第1波まで)の日本国内における新型コロナウイルス感染症の致死率(=死亡者数/陽性者数)の数値として用いることにする。将来的には、この5.3%という数字は国内でPCR検査体制が拡充される前の致死率という位置づけになるだろう。

 昨日(6/1)の日本国内で新たに確認された陽性者数は37人で死亡者は2人、累計では陽性者数16949人に対して死亡者数は898人、致死率は5.30%で、ここ数日致死率はほとんど動かなくなった。

 

出典:https://kojitaken.hatenablog.com/entry/2020/06/02/061427

 

 上記引用文の最後から、5/31までのクルーズ船を除く日本国内の陽性者は16912人、死亡者は896人だったことがわかる。

 今日(8/1)未明のNHKニュース*1を参照すると、7/31までのクルーズ船を除く日本国内の陽性者数累計は36389人、死亡者は1013人である。単純に致死率を計算すると2.8%になるが、この数字には意味がない。いわゆる「第1波」(私は第1波及び第2波だと考えているが)の分まで含まれてしまうからだ。

 そこで、「K値」の手法に倣って、というわけでもないが、5月末でいったん「リセット」を行い、6/1以降に確認された陽性者と死亡者の数を引き算で求めると、6/1から7/31までの2か月間に確認された陽性者数は19440人、死亡者数は105人で、致死率は0.5%という低率になっている。死亡者数には「第1波」によるケースも混ざっているだろうから、実質的には致死率はさらに低いはずだ。

 しかし、春の例から類推して、死亡者数が今後ぐんぐん増えることは間違いない。言葉は悪いが、「まだ死んでない人」が死に始める。新型コロナウイルス感染症では長患いの末に亡くなる人が多い。但し、検査数が増えているので、検査による捕捉率を反映する数字でしかない最終的な致死率は、今回のいわゆる「第2波」(私の定義では「第3波」)については、おそらく前回の3分の1にあたる1.8%くらいになるのではないかと予想する。しかしそれでも、6月、7月に確認された2万人近い陽性者のうち、既に亡くなった人たちの分を除外しても、300人くらいの死亡者が今後出る恐れが強い。しかも悪いことに、主に安倍政権の無策によって、陽性者は日々増え続けている。上記300人のうちには、今日(8/1)以降確認される陽性者は含まれていないのだ。

 死亡者数が増える気配は既に表れている。昨日(7/31)確認された陽性者数は1580人だが、死亡者が6人出ている。1日の致死率としては0.4%だが、このところ日に5人を超える死亡者が出る日がぽつぽつ出始めた。死亡者数は今月かなり増え、来月(9月)になると目に見えて多くなるはずだ。PCR検査数は名古屋市などでは相変わらずキャパが極端に小さいが、東京都などではかなり増やしているようだから、最終的な致死率は1.8%も行かないかもしれないが、それでも1%台には確実に乗るだろう。今後の数字が悪くなることは覚悟しておかなければならない。

 ことに地方の県知事らが懸念しているのはお盆の帰省ラッシュだが、どうなることやら。今のままだと、東京・大阪・名古屋などからの帰省者が感染を拡大する恐れがきわめて強い。

 しかし、ゴールデンウィークに続いてお盆でも人の移動を制限すると、そうでなくとも5月頃に大きく下げて未だに回復しきっていない安倍内閣の支持率がまた下がるだろう。もちろん、感染状況がこのままでは、安倍晋三が企む衆議院の解散も来年の東京五輪の開催も不可能だ。

 事態がどうなるかはわからないが、暗い予感しか持てない、とんでもない8月のスタートとなった。

愛知県が名古屋市のPCR検査引き受けを呼びかけたが、市は応じていなかった。名古屋市民は市長・河村たかしの責任を問え

 7月最後の昨日(7/31)は東京都や愛知県などで新型コロナウイルス感染症の陽性者が最多を記録し、大阪府でも過去2番目の多さだった。

 愛知県の中では名古屋市が突出して悪いが、ようやく地元・名古屋の放送局である東海テレビから名古屋市長・河村たかしを批判する報道が現れた。下記は一昨日(7/30)夕方に放送されたニュースのようだ。

 

www.tokai-tv.com

 

 以下引用する。

 

県が引き受け呼びかけるも市は応じず 不十分な連携

07月30日 21:10

 

 新型コロナウイルスの感染拡大が止まらない愛知県と名古屋市ですが、両者の連携が不十分です。

 30日の記者会見でも、大村知事は「愛知県内の医療体制はひっ迫していない。十二分に病床数はある」と話しましたが、名古屋市の担当者は「ひっ迫している」と話しています。

 つまり、県全体では病床数は足りていますが、名古屋市単体でみるとひっ迫しているということです。

 またPCR検査についても、名古屋市では検査を待たされ、しばらく経ってから感染が判明するケースが出ています。名古屋市は1日に検査できる検体の数が最大で160ですが、県は市の4倍の検査能力を持っています。

 県は、市に検査を引き受けると呼びかけていますが、市はそれに応じていないということです。

 

東海テレビ「ニュースOne」より)

 

出典:https://www.tokai-tv.com/tokainews/article.php?i=135173&date=20200730

 

 同様の批判は他の名古屋のメディアからも上がっているに違いない。それは名古屋市の検査数の増加に反映している。

 

 

 上記サイトを参照すると、名古屋市の今週月曜日(7/27)から金曜日(7/31)までの検査実施人数は、125人、125人、202人、282人、372人となっている。同じく陽性者と陽性率は、36人(29%)、65人(52%)、93人(46%)、108人(38%)、102人(27%)となり、7/29以降は愛知県に検査を一部委託していることがわかる。昨日は、検査数を増やしたことによってようやく陽性率が少しだけ下がったようにも見える。

 

 とはいえ、これまで河村たかしはいったい何をやってきたのか。

 前記東海テレビのニュースについた「はてなブックマーク」より。

 

b.hatena.ne.jp

 

検査待ちのケースも 名古屋市のPCR検査は限界…県が引き受け呼びかけるも市は応じず 不十分な連携 | 東海テレビNEWS

まさか名古屋市長が愛知県知事に貸しを作りたくない、なんて駄々っ子みたいな理由ではないよね。

2020/07/31 09:08

b.hatena.ne.jp

 

検査待ちのケースも 名古屋市のPCR検査は限界…県が引き受け呼びかけるも市は応じず 不十分な連携 | 東海テレビNEWS

名古屋市長は個人的感情から意固地になってるようにしか見えない。名古屋市長の方がリコールされそう。

2020/07/31 09:10

b.hatena.ne.jp

 

検査待ちのケースも 名古屋市のPCR検査は限界…県が引き受け呼びかけるも市は応じず 不十分な連携 | 東海テレビNEWS

そういえば、明日8/1から大村知事リコール運動開始のはずだけど、高須院長(と河村市長)はこの状態でも始めるのだろうか。/追記:やるらしい。 <a href="https://twitter.com/katsuyatakasu/status/1288831743382839298" target="_blank" rel="noopener nofollow">https://twitter.com/katsuyatakasu/status/1288831743382839298

2020/07/31 09:07

b.hatena.ne.jp

 

 また、Twitterからも河村の評判を拾った。

 

 

 

 

 

 ところで、河村たかしは「小沢一派」の政治家だ。河村が民主党衆院議員を辞めて名古屋市長選に初めて立候補した2009年には、小沢系の国会議員や市民運動家の多数が支援した。その前からずっと河村は極右的な思想信条の持ち主であったにもかかわらず。

 その河村が昨年「あいちトリエンナーレ」をめぐって騒動を引き起こしたが、この時批判を浴びまくった河村が沖縄に行って同県知事の玉城デニーに慰められたとの話を聞いた。山本太郎もなかなか河村を批判しようとしなかったが、かなり遅れてようやく河村批判のコメントを出したのだった。このあたりが小沢系の人々や山本太郎を私がどうしても信用できない一因になっている。

 そんな河村だが、これまでは名古屋市民の間での人気が結構高かったと聞く。大阪府知事の吉村洋文と同様、人々を騙すテクニックには長けているらしい。

 しかし、名古屋市民もいい加減眼を覚ますべき時だ。そうでなければ、自分たちの命が脅かされてしまう。同市民は河村たかしの責任を問うべきだ。

大阪府は「K値」切り捨てに走ろうとしているようだが、吉村洋文は「K値」採用の経緯と結果を検証せよ

 吉村洋文の大阪府政が、掌返しをして中野貴志大阪大教授の「K値」を切り捨てようとしているらしいとのツイートが見られた。

 

 

 

 テレビ局にも説明責任があるだろうが、もっとも重い説明責任を負うべきは吉村洋文だろう。

 吉村は、K値を府政の新型コロナウイルス対応に取り入れた経緯や結果を検証し、公表しなければならない。それが為政者の責任というものだ。

 吉村は先月(6月)半ば頃に、緊急事態宣言の効果を検証するとも言っていたはずだから、それと合わせて検証結果を公表せよ。

上久保誠人氏の「安倍政権免罪論」(?)の記事で指摘された「経産系官邸官僚の突出的暴走」こそ安倍政権の新型コロナウイルス対応を誤らせている元凶ではないか

 

 かつてブログ「かみぽこぽこ。」でネットの政治的議論では有名だった上久保誠人氏は、結構新自由主義的な考え方をする人だし、下記記事のタイトルは全くいただけなかったので、批判的に読んでみようと思った。

 

diamond.jp

 

 ところが、記事の途中にある下記の部分は、意外にもなるほどと思わされた。以下引用する。

 

 この連載が指摘してきたように、尾身会長ら「専門家」とされる委員の役割は、科学的知見を政府に提供することではない。政府の方針に、学会の重鎮が承認したという「お墨付き」を与えることだ(第242回)。しかし、専門家会議から分科会に代わって、何に「お墨付き」を与えるのかが変わっている。

 専門家会議のときは、厚労省・健康局結核感染症課の医系技官が会議の議題を作成していて、それに専門家が「お墨付き」を与えていた。医系技官は、世界最先端の感染症研究をフォローできていたか疑わしかった(第246回・P3)。とはいえ、それでも専門家会議では一応「医学に基づく提案」を審議していたことは間違いない。

 しかし、分科会では首相官邸が医系技官を嫌い、議論からほぼ排除しているようだ(第246回・P4)。その結果、安倍・西村・赤羽の三氏など医学の「ど素人」である政治家が決めたことに、専門家が「お墨付き」を与えることになったのだ。要するに、新型コロナ対策を巡っての「防疫か経済か」の綱引きは、完全に「経済」が勝利した形になっている(第243回・P7)。

 この連載では、今後さらに毒性の強い感染症に襲われたときのため、そしてポストコロナ時代のテクノロジーの劇的進化に対応するため、専門家の知見を有効に活用するための抜本的な政策立案過程の見直しを主張してきた(第246回・P5)。しかし、目の前にある現実は、専門家を政治家・経済人が抑え込んで、非科学的な決定に従わせているように見える構図である。専門性を軽視する意思決定は、将来に大きな禍根を残すことになりはしないだろうか。

 

出典:https://diamond.jp/articles/-/244150?page=3

 

  このあたりに指摘されていることは、たぶんその通りだろうなと思わせると同時に、心胆を寒からしめるものだ。科学的知見を無視した素人の暴走が国を誤らせているという構図しか読み取れないからだ。

 しかし、上記引用文からリンクされている上久保氏の記事のバックナンバーを参照すると、そこには全く感心しない記述が溢れていた。変な学者の妙ちきりんな仮説に飛びつくなどしていて、目も当てられない。失礼ながら、上久保氏は新型コロナウイルス感染症に関しては、ずいぶん無定見な記事を書き飛ばしておられるようだ。

 それにもかかわらず、上記引用文での指摘、ことに引用者(私)が赤字ボールドにした部分は問題の核心を突いている。但し、「目の前にある現実は、専門家を政治家・経済人が抑え込んで、非科学的な決定に従わせているように見える構図である」という文章にある「ように見える」という6文字は不要だ。安倍政権が「経産省政権」の異名をとる通り、安倍官邸を実質的に動かしているのは経産省系の官邸官僚だろうが、彼らが自分たちの意に沿わない専門家の意見を抑え込んで暴走しているのが、現在の安倍政権の新型コロナ対応だ。

 引用文中の最後にある「将来に大きな禍根を残す」に続く「ことになりはしないだろうか」という部分も不要だが、「将来に大きな禍根を残す」でもまだ大甘な表現だろう。「近い将来に日本国民及び日本に住む人々に大きなダメージを与える」とでも書かれるべきだった。

 記事についたはてなブックマークのコメントもざっと見た。

 

b.hatena.ne.jp

 

 この中では、下記のブコメが私の感想にもっとも近かった。

 

「Go To強行」の無残は、安倍政権のみならず全政治家に責任がある | 上久保誠人のクリティカル・アナリティクス | ダイヤモンド・オンライン

安倍政権免罪論としてだけ読むと旨味のない記事。前半の経産系官邸官僚の突出的暴走、後半のグローバル化と公共事業偏重と地方経済衰退、それぞれの背景説明は概ね順当だと思う(後者は若い人は知らなかったりする)

2020/07/28 12:19

b.hatena.ne.jp

 

 このエントリでは「前半の経産系官邸官僚の突出的暴走」に焦点を当てた。現在の安倍政権の新型コロナウイルス対応でもっとも問題なのはここだと思うからだ。例の中野貴志大阪大教授の「K値」にすぐに飛びつくのも、この手の輩だろう。

議会解散の権限を持たない「虚人」千代田区長が「区議会を解散した」と妄言を吐く。3年半前の「千代田区長選虚」の虚しさを改めて思う

 今年は新型コロナウイルスも変だが、気候もめちゃくちゃ変だ。以下は東京の話だが、1月、2月の超暖冬のあと4月は低温になった。かと思うと、梅雨入りしてすぐに梅雨末期のような豪雨になり、どんな猛暑の夏になるかと思いきや、梅雨末期になって梅雨初期を思わせる「梅雨寒」になり、今に至っている。こんな「あべこべの梅雨」はちょっと記憶にない。ところが、8月に入る来週の梅雨明けのあとは猛暑になるのだという。「気候変動」が本当に激しくなった。

 地方自治を含む政治も変で、新型コロナウイルスの感染者が増えているにもかかわらず、感染像を煽るかのような「GoToトラベルキャンペーン」を強行する、首相の安倍晋三は記者会見にも出てこないというありさまだ。また、「緊急事態宣言など必要なかった」という論陣を張っていて今や馬脚を現し始めた大阪府知事・吉村洋文が「コロナ対策で名を上げた」などという、実態とは真逆(まぎゃく)の嘘の評判をマスメディアが垂れ流すなど、これまた「あべこべ」の見本みたいな例もある。

 こんなでたらめは、何も今に始まった話ではない。

 3年前、東京都知事に就任して1年目の小池百合子が、何を思ったか、千代田区長選で多選の現職を応援したことがあった。「都議会自民のドン」が対立候補を応援したのだったか、それすらよく覚えていないが、当時私が日々チェックしていた「リベラル」(または「都会保守」)のブログは多選区長を熱烈に応援した。このブログ主は、元都知事猪瀬直樹が「都議会自民のドン」を「大批判」したなどというエントリを嬉しそうに上げていたが、そんなに石原慎太郎の直系に肩入れしてどうするんだよ、と思ったものだ。「敵の敵は味方」の論法を使うと、こんな馬鹿げたことをやってしまうという悪い見本だった。

 その頃、「ちよだくちょうせんきょ」と入力したら、「千代田区長選虚」と変換されたことがあった。「千代田区長選」+「虚」と解釈されたのだ。私のPCでは「きょじん」とタイプすると「虚人」だの「虚塵」だのが、某NGワードよりも先に出てくるが、「きょ」に対応する漢字は「虚」だとコンピュータが覚えているのかもしれない。

 3年半前、私は「今回の区長選は『虚』を選ぶ選挙でしかないよなあ」と思ったので、「千代田区長選虚」という誤表記のまま、何件もの記事を書き続けたのだった。

 その選挙で、対立候補の数倍の得票で圧勝した区長が、自らのマンション購入をめぐって区議会から告発を受けたところ、「虚人」区長は自らの権限では解散できないはずの区議会を「解散した」と称する妄言を発して物議を醸している。

 あの時、この「虚人」区長を熱烈に「大応援」した「リベラル」氏は今何を思うのだろうか。言い訳を聞きたいものだ。

新型コロナウイルス感染症の新たな陽性者、大阪221人、愛知167人(うち名古屋市93人)。東京以上の深刻さ(2020/7/29)

 大阪府と愛知県、後者では特に名古屋市での新型コロナウイルス感染は、もはや東京都以上に深刻な状況になった。

 昨日(7/29)新たに確認された陽性者数は、東京都250人に対して大阪府221人、愛知県167人(うち名古屋市93人)と、人口比からいえば大阪府と愛知県(特に名古屋市)は東京都以上に多くなった。もっとも、東京都の場合は相変わらず集計に手作業が占める割合が大きいせいか、大阪府や愛知県よりも結果の発表が遅く、250人という数字には4連休の影響がまだ残っていた可能性がある*1

 昨日、大阪府の陽性者が大幅に増えたことをYahoo! JAPAN経由で知った時に、「吉村府知事は動きの鈍い国に対抗して積極的なコロナ対応をやってたはずなのに」といった類のヤフコメを多数見かけたので頭痛がした。そんなのは大阪府やマスメディアの嘘宣伝に過ぎないのに。

 たとえば、日本全国が緊急事態宣言下にあった5月11日に、大石佳能子なる人物が下記の記事を公開している。

 

mediva.co.jp

 

 以下引用する。

 

8割おじさん」こと西浦北大教授が主張されているように、ウィルスの感染というものは指数関数的に増えるものです。

ただ新型コロナに関しては、自粛の効果や(多分)自然免疫等によって「指数関数的な爆発」は避けられているのではないか、ということを皆さんも薄々感じてらっしゃるのではないでしょうか。もちろん、ハイリスク者が多くいる病院や施設等がクラスター化することはあり得ますし、それを全力で防ぐ必要はあります。

ただ、今のような社会活動全体を止めるという自粛活動が正しいのか?を判断するには、新型コロナとの闘いの「現状と将来」を正しく捉える必要があります。

ところが、今まで「新型コロナは収束しつつあるのか、指数関数的に患者が増えるのか?」を正しく把握するための「指標」がありませんでした。毎日の感染者数に一喜一憂し、100人越えたの、越えてないのと騒ぎ、、(でも月曜日は必ず少ないですよね)。これで日本の将来を決めようというのは、羅針盤も無く、大洋に漕ぎ出すようなものです。

今回ご紹介するのは、大阪大学教授(核物理研究センター)の中野貴志先生が考案された「K値」という指標です。

え、医学部の先生じゃないの?と思われるかもしれませんが、医学部の先生でなく、さらには感染症の方でないからこそ気づかれたのではないか、と私は思っています。ちなみに大阪大学では、金田安史副学長(元医学部長)、吉森生命機能研究科長はじめ医学部の先生方にも全面的にendorseされています。

 

K値とは

 

K値」とは、過去一週間の類型感染者数の増加率を、今日の感染者数を基準として評価したものです。数式は次のようになります。

X=累計感染者数 Y=1週間前の累計感染者数 
K=X-Y)/X = 1Y/X

K値は、時の経過ともに安定的に推移し、収束に向かっていきます。また、その速度が国によって異なり、「その国がまだ危うい状態かどうか」を把握することができます。

勿論、突然ある地域にクラスターが発生するなどのことが起こるとK値はブレますが、その後また一定の速度で収束に向かいます。その収束予測数値と現状のブレにより、予定外が起こっているのか?が把握できるのです。

私はこの指標を中野先生から、1か月ほど前に聞きました。過去のトレンド共に、ゴールデンウイーク明けの数値予測を伺ったのですが、これがドンピシャリの大当たりでした!

中野先生のご説明によると、「日本ではCOVID-19が感染収束に向かって順調に進展していることが分かる」、「日本におけるK値の推移は極めて安定的で、ヨーロッパのいくつかの国で見られたような社会活動の制限等の施策による感染収束速度の増加もなければ、米国で見られるような感染再拡大の兆候も見られない。このまま順調な推移が継続すれば、5月中旬には多くの国で感染収束宣言が出ているレベルまで達するであろう」とのこと。

実はK値を見ると、緊急事態宣言の前後で感染者数の増加パターンは変わっていません。これは、宣言前から手洗いマスク等で国民を自主的に努力していた。または自然免疫がついていた等々の理由はあり得ると思います。理由はともあれ、収束しつつあるなら緊急事態宣言を継続して各種活動を制限し続けることは害の方が大きくなります。

勿論、海外から変異したウィルスが入ってくるなど、コロナの危険性が去ったわけではないので、K値をしっかりモニターし続け、それに応じて臨機応変な対応をとる必要はあるでしょうし、引き続き3密を避ける、手洗い、マスク等は気を付けるべきでしょう。

しかし最も力を注ぐべきは、社会全体のロックダウンではなく、病院や施設等、「ハイリスク×構造的3密環境」でクラスター爆発が起きないよう資源を集中すること。そのためにも、医師が必要と思った人に対しては早期に検査が出来て、早期に介入できる体制を早急に整備すべきと思います。

K値の詳しい解説は、大阪大学准教授(経済学)の安田洋祐先生がブログに書かれているのが分かりやすいのでご紹介します。そこから、中野先生の論文も辿れます。
https://note.com/yagena/n/n22215ecd9175
https://note.com/yagena/n/nec5546ce7199
https://note.com/yagena/n/n52b77242e633

国に先んじて、地方自治体では指標としてK値の活用に積極的です。厚労省でも議論は始まっています。久しぶりの明るいニュースです!

ちなみに、「8割減らす」は「人出を8割減」ではないこと、ご存じでした?「8割減らす」べきは「接触」です。人出が半減し、減った分だけ接触が半減すると0.5×0.50.25で、ほぼ8割です。マスコミは「人が8割減ってない!」と言っていますね。「8割おじさん」も政府も、誤解を放置していますが、悪い意図を感じます、、。

 

出典:https://mediva.co.jp/blog/2020/05/post-4227.html

 

 この大石佳能子あたりが「K値」の「アーリーアダ(ド)プター*2」だったのだろうが、一読してわかる通り、「K値」を論拠にして「規制を緩めても大丈夫」と主張する内容だ。

 「人と人との接触の規制」など早く止めて、「都構想」とやらの再びの住民投票を早くやりたかった吉村洋文が飛びついた「国に対抗する新型コロナ対応」の中身はこれだった。マスメディアは吉村を大いにもてはやしたが、それが規制を緩和して「経済を回す」ことを優先する方向性を持っていることは指摘しなかった。だから、テレビ(特に在阪局)の視聴者は、あたかも吉村が新型コロナ対策に前向きに取り組んでいるかのような、誤った印象を持った。その結果、現在の惨状に直面してもなお、吉村に対する十分な批判ができなくなっている。

 しかし、さらにずっとひどいのが名古屋市だ。同市のひどさは、前述の大阪府どころではない。

 

 上記サイトからリンクされている陽性者数のデータを見ると、7月28日が検査実施人数125人*3に対して陽性患者数65人で陽性率は52%、29日が検査実施人数202人に対して陽性者数93人で陽性率は46%というめちゃくちゃな数字だ。陽性率は東京都で6%台、大阪府では10%台というから、いかに名古屋市の状況が深刻かがわかる。J1の名古屋グランパスエイトプロ野球中日ドラゴンズの試合は中止した方が良いくらいではないか。

 名古屋市がここまで深刻な状態になった大きな要因は、市長・河村たかしの無策である。河村は大村秀章知事のリコール運動ばかりに熱心だから、名古屋市での陽性率が目に見えて上がってきても、県に相談もせずに放置した。その結果が今の惨状だ。名古屋市民は河村のリコール運動を起こすべきだろう。

 維新の大阪府市と「減税日本」の名古屋市は、ともに新自由主義者に牛耳られている。東京都知事小池百合子新自由主義者だが*4、大阪や名古屋では好き勝手にやれる自由度が大きいために、より極端な事態を招いてしまったのではないかと思われる。

 新自由主義(者)が国を滅ぼすことはもはや明らかだが、せめて吉村洋文や河村たかしに対する批判くらいは、もっと積極的に行われてしかるべきだろう。それができない日本の現状は、人々が萎縮しきっているとしか言いようがない。

 まさに、批判の言説が絶え果てた「崩壊の時代」。

*1:岡田晴恵氏などはこの点で大阪府を褒めそやすのだが、大阪に対する点が甘すぎるだろう。そんなものは東京都を批判するだけで良い。

*2:Early adopters. 「アダプター」と書くと、電気製品でよく使われるadapter(adaptor)と紛らわしいから、「アドプター」と表記すべきではないかと思っている。イギリス英語では「アドプタ」に近い発音だし、アメリカ英語でも「ア」と「オ」の中間の発音だ。

*3:この数字は前日(7/27)と同じ。昨日公開した記事でも名古屋市の陽性率を取り上げようかと思ったが、日付の誤記があったので(現在は修正されている)、日付のデータともども誤記ではないかと思って取り上げるのを止めた。もっとも、検査実施人数もあとから上乗せされる可能性がある。

*4:吉村洋文・河村たかし小池百合子の3人は、全員揃って極右でもある。