kojitakenの日記

古寺多見(kojitaken)の日記・はてなブログ版

パラグアイといえば岡林洋一

サッカーW杯の相手・パラグアイに対しては日本は過去6戦して一度しか勝っていないという(3引き分け2敗)。日本のサッカーは南米に弱いとの定評があるそうだが、1996年の五輪ではブラジルに勝つ大番狂わせも演じている。パラグアイは、過去3度決勝トーナメントに進出しながら一度も勝っていないそうだが、パラグアイ国民は、またとない決勝トーナメント初勝利のチャンスと思っているだろう。同様に、韓国の相手、ウルグアイの国民も、40年ぶりのベスト8進出の好機と思っているに違いない。

ところで、プロ野球ファンがパラグアイと聞いて思い出すのが、18年前のヤクルトスワローズのエース・岡林洋一だ。パラグアイで日系二世として生まれ、中学生時代までパラグアイで過ごした岡林は、1990年にヤクルト入りするといきなり主戦投手となり、1992年にはエースとして活躍した。この年の9月11日(!)、甲子園球場で行われた阪神との首位攻防戦で、岡林は同点の7回にリリーフに立って、なんと延長15回までの9イニングを「完封」した。ところが、ヤクルトの野村克也監督はその2日後の同じ阪神戦、同点の延長10回に再び岡林をマウンドに送り、広沢のサヨナラ失策(何でもない一ゴロをみごとにトンネル)によって、今度は敗戦投手になった。

岡林はこの酷使がたたって故障したが、故障明けでいきなりリリーフで再び酷使され、広島での3連戦で二度のサヨナラ負けを喫した。

それでも執念深い野村監督は、救援失敗の続くエースを、「天王山」といわれた神宮球場での阪神との首位攻防戦に先発させると、1か月前にサヨナラ失策を犯した広沢が、好投を続けていた阪神先発・仲田幸司から奪ったソロホームランで挙げた1点を岡林が守り抜いて、今度は本物の「完封」を記録したのである。翌日には9回裏にヤクルトが阪神に逆転サヨナラ勝ちして、ペナントレースの行方は決まり、ヤクルトが優勝したが、この年のヤクルトと阪神の激闘は、1988年と89年のパシフィックリーグの西武と近鉄の激闘と並んで、私には忘れられない。勝ったヤクルトはもちろんだが、敗れた阪神の選手たちの敢闘ぶりも印象に残った。しかし、東京ドームのグラウンドにラジカセを投げ入れた「阪神フーリガン」たちや、ヤクルトがリーグ優勝を決めた甲子園球場の試合のテレビ中継にゲストとして出演しながら、敗色が濃厚になった阪神の選手たちに暴言を吐いた、自称阪神ファン月亭八方は最低だった。甲子園球場に詰めかけた阪神フーリガンたちは、かつて巨人に優勝を決められた時のようにグラウンドに乱入こそしなかったが、野村監督を胴上げをするヤクルトの選手たちに「帰れ」コールを浴びせた。

西武との日本シリーズでも岡林は3試合すべてに完投したが、報われたのは延長12回を投げ切って、杉浦亨の劇的な代打サヨナラ満塁本塁打で勝利投手になった第1戦だけであり、第4戦では秋山幸二のソロホームラン一発に泣いて1対0で敗れ、最終戦でも同点の延長10回に、再び秋山幸二に犠牲フライを打たれて力尽き、2対1で敗れた。このシリーズで、岡林は勝者以上に喝采を浴びた敗者となった。

だが、9年後なら小泉純一郎が「痛みに耐えてよく頑張った、感動した」と絶叫したかもしれないこの年の酷使がたたって、翌年岡林は故障した。翌々年の1994年に復活したものの、95年には再び故障し、以後かつての輝きを取り戻すことはなかった。私は、なぜか千葉マリンスタジアムで行われた1994年のヤクルト対阪神戦に先発した岡林が、阪神打線を完封するのをスタンドで観戦したが、翌年神宮球場で見た時には、岡林は試合開始早々阪神打線にメッタ打ちされて、ヤクルトは阪神に大敗した。

ヤクルト時代の野村監督の大罪は、1992年に岡林洋一を酷使して潰し、リーグ2連覇と日本シリーズ優勝を果たした翌93年、今度は伊藤智仁を酷使して潰したことだ。中日の星野仙一も近藤真一や今中慎二を潰したが、以後のセントラルリーグの投手たちは酷使を拒むようになった。巨人・上原浩司、阪神井川慶、中日・川上憲伸らはいずれも大事に使われたが、揃ってMLBに移籍した彼らは、実績を残せずにいる。開幕から連戦連敗の川上にはすっかり「ダメジャー」のあだ名が定着したし、大のサッカー狂で知られる井川は今何をしているのだろうか。その井川と2003年の日本シリーズ第1戦でともに先発しながら、井川ともども相手打線に打たれ、その後はやはり井川同様にポストシーズンで1勝も挙げられずにいるホークスの斉藤和巳は、「プロブロガー」として有名になるありさまだ。「プロブロガー」を検索語にしてGoogle検索をかけると、斉藤和巳について書いた当ブログの記事が筆頭で引っかかるほどである(笑)。

そんなわけで、岡林洋一伊藤智仁には思い入れの深い私だが、上原や川上や井川には何の思い入れもない。岡林洋一を懐かしく思い出すことはあっても、昨日から神宮球場で行われているヤクルト対阪神の3連戦には何の興味も湧かないのである。