kojitakenの日記

古寺多見(kojitaken)の日記・はてなブログ版

羽生結弦選手と「弓弦羽」

ソチ冬季五輪の男子フィギュア、羽生結弦が金メダルを獲ったそうだ。
羽生といえば、将棋の棋士のおかげで、ある時期から「ハブ」と読む癖がついてしまっていたが、この人は「はにゅう」。世間一般ではこの方が普通かもしれない。


ところで、日刊スポーツの記事にちょっと興味をそそられる記述があった。以下はソチ五輪における羽生選手のパフォーマンスとは全く関係なく、単に個人的な興味を綴ったどうでも良い話である。

羽生結弦が金、弓弦羽神社の御利益あった - フィギュア - ソチ五輪2014 : nikkansports.com

羽生結弦が金、弓弦羽神社の御利益出た

 19歳の羽生結弦(ANA)が、日本に待望の金メダルをもたらした。冒頭の4回転サルコーで転倒するなど2度のジャンプ失敗にも気持ちを切らさず、こん身の演技でカバー。SPで世界最高得点をたたき出した羽生は、そのアドバンテージを生かし、フリーでも1位(178・64点)となり合計280・09点。2位のパトリック・チャン(カナダ)を抑えて逃げ切った。羽生は、フィギュアの日本男子では五輪初の「金」となる快挙を達成した。

(中略)

 仙台出身の羽生は、東日本大震災で、自信が練習していたリンクも被災するなど大きな痛手を追った。3年前には、名前が似ていることから話題となった弓弦羽(ゆづるは)神社(神戸市東灘区)に母と参拝した。

 絵馬には「世界のトップになれますように… そして、東北の光となれるように!」と16歳の少年は世界一への決意と、復興の願いを込めていた。そんな少年はたくましく成長し、被災地にも勇気という名の「光」をソチから届けた。

(後略)
(日刊スポーツ 2014年2月15日7時5分)


神戸は私の子ども時代の地元だが、この弓弦羽神社というのは知らなかった。そこでもう少し調べてみた。

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フィギュア羽生選手ファン縁の地、神戸「弓弦羽(ゆづるは)神社」が話題に


 ソチ五輪フィギュアスケート団体戦男子ショートプログラム(SP)で、ライバルとなる世界選手権3連覇のパトリック・チャン(カナダ)、2006年トリノ五輪の金メダリスト、「皇帝」エフゲニー・プルシェンコ(ロシア)を破り1位となった羽生結弦(はにゅうゆづる)選手(19、ANA)。そんな羽生選手の活躍とともに、兵庫県神戸市の「弓弦羽(ゆづるは)神社」が、羽生選手と「名前が似ている」とインターネット上で噂が広まり、連日多くのファンが訪れ注目を集めている。13日(日本時間14日未明)に行われるSPを前に、ますます盛り上がる同神社を訪ねてみた。


「弓弦羽(ゆづるは)」という名称の由来は

 同市東灘区の阪急神戸線御影駅から南東へ徒歩5分。森や美術館、閑静な住宅地に囲まれた同神社は熊野大神を祀り、849年(嘉祥2年)に社殿が造られ遷座したという歴史を持つ。なぜ「弓弦羽」という名称なのか。同神社宮司の澤田政泰さん(60)は「6年ほど前までここの地名は『御影弓弦羽ノ森』でした。それと背後にそびえる六甲山が昔『弓弦羽岳』と呼ばれていたことなどが由来とされています」と話す。19年前には阪神・淡路大震災社務所が倒壊するなど被災。地元住民に物資を配る場所にもなったという。
羽生選手との縁ができたのは、ファンの行動から

 そんな歴史のある神社だが、なぜ羽生選手との縁ができたのか。それは「『ゆづるは』と『はにゅうゆづる』という名前が似ている」と、ファンが同神社のお守りを羽生選手に贈ったことがきっかけだという。以来、ネット上でもこのことが話題となり、全国各地からファンが訪れるようになった。そして、3年前には羽生選手も同神社を訪れ、絵馬に「世界のトップになれますように...そして、東北の光となれるように!」と記していった。
 「昨年12月の選考会の時や正月くらいから急に訪れる方が増えた印象です。昨日も東京から来たという人がいましたよ」と澤田さん。13日のSPを目前に控え、応援メッセージが書かれた絵馬が連日増えてきた。澤田さんは「どなたがこうしたご縁を作ってくれたかはわかりませんが、インターネットの力はすごいですね。しかし、このようなご縁を頂いたので、羽生選手の応援には力が入りますね。」と笑顔で話していた。

 同神社を後にしようとした時、澤田さんが「よかったらこれも見ていってください」と案内してくれた。そこには御影石で作られた大きなサッカーボールが。澤田さんによると、昔、教員を養成する御影師範学校があり、そこでサッカーが取り入れられ、教員となった生徒が各地で広めたことが、サッカー普及のきっかけになったとされているという。
 そうした縁の地が地元にあったことから、御影石を使ってサッカーボールを作った。この石は、震災で被災した鳥居も一部使われているという。1月にはサッカー女子・プレナスなでしこリーグINAC神戸澤穂希選手ら22選手が必勝祈願を行っている。「こうしていろんなご縁ができるのはうれしいです」。澤田さんは笑顔で、同神社のシンボルマークである八咫烏(やたがらす)が刻まれたボールの石をまわしてみせてくれた。

(『THE PAGE』2014年2月13日)


「六甲山が昔『弓弦羽岳』と呼ばれていた」というのも初耳。私は「六甲おろし」を背に受けて育ったのだけれど(阪神ファンではないけど)。「六甲」は昔「武庫川」の「武庫」と同じく「むこ」と読んでいたとかそういう話なら聞いたことがあるが、「弓弦羽岳」と言ったとは全く知らなかった。そこでWikipediaを参照してみた。

弓弦羽神社


祭神

熊野三山に祀られる神である伊弉冉尊那智大社)・事解之男命本宮大社)・速玉之男命(速玉大社)を祀り、「根本熊野三所大神」と総称する。天照皇大御神・素佐男尊を配祀する。八咫烏をシンボルとする。


歴史

神功皇后三韓征伐からの帰途、忍熊王が挙兵したことを知り、この地で弓矢・甲冑を納めて熊野大神に戦勝を祈願した。弓矢・甲冑を納めたということから、当社背後の山を「弓弦羽岳」「武庫山」(後に「六甲山」の字が宛てられた)と呼ぶようになった。

延暦年間(782年 - 805年)に弓弦羽の森が神領地と定められ、嘉祥2年(849年)、社殿を造営し遷座した。平安中期以降は熊野信仰の隆盛に伴い崇敬を集めた。

17世紀には灘地方で酒造家の創業が相次ぎ、造酒・回船業の氏子を集め繁栄した。

日本酒の名産地である灘五郷にあり、氏子には造酒メーカーも多い。新年に菊正宗、白鶴、剣菱の奉納した樽酒がふるまわれるほか、メーカーの醸造祈願祭も行われる。


阪神・淡路大震災

東灘区の被害は甚大で建物の全壊は11171棟(神戸市全体のほぼ5分の1を占める)にのぼったが、弓弦羽神社でも社務所、手水舎、絵馬堂が全壊した他、鳥居の笠木が落下した。氏子も多数が死傷し、神社参道の入り口には慰霊碑が建てられている。

1995年11月には「神戸ルーツ」と題するパブリックアート現代美術家八木マリヨの提唱で制作された。全国から集められた一万着の古着を束ねて縄にするというもので、延べ500人の市民が参加し、拝殿の正面に直径1m、高さ8mの縄が垂直にたてられた。この大縄は震災から1年がたった1996年1月17日におこなわれた震災復興祈願祭(神職100名が参加、参列は約2000名)の際に「鎮魂の送り火」として拝殿の正面に垂直に立てられたまま燃やされた。


交通

阪急神戸線 御影駅より徒歩5分。
JR神戸線・六甲ライナー 住吉駅より徒歩10分。
阪神本線 御影駅より徒歩15分。


そうか。それで「弓弦羽」(=「武庫」)と「六甲」とがつながるのか。いずれにしても神話の戦争と関係の深い地名ということか。弓や弦の文字から、何も考えずにヴァイオリンなどの弦楽器を連想してたのだけれど、そもそもは武器だものな。

ところで神戸の「弓弦羽神社」は知らなかったが、「弓弦羽」という地名なら別の地で知っていた。数年前まで住んでいた香川県高松市である。同市亀水町の集落名とのこと。但しこちらは「ゆづるは」ではなく「ゆずりは」と読ませる。行ったことはないが、「弓弦羽行き」のバスが出ていたので地名は知っていた。漢字の読みはネット検索で知ったが、「ゆずりは」といえば普通は植物の名前を思い浮かべるから、へえ、面白いなと思った記憶がある。ネット検索で、「弓弦羽バス停」という記事が引っかかったので下記に示す。ブログ主は岡山の人らしい。リンク先をご覧いただければわかるように、どえらい田舎。それもそのはず、高松市といっても西の外れ、五色台の麓である。羽生選手の地元・仙台などもそうだったと思うが、地方の県庁所在地の市は自治体の合併によってどえらい田舎まで含まれることが多い。


「弓弦羽」という地名が他にもあるのでないかと思って調べてみたら、こんなのを見つけた。こちらは京都である。

JLogos | 弓弦羽里(古代) | 角川日本地名大辞典(旧地名編) > 京都府 > 向日市

弓弦羽里(古代)


 条里の里名山城国乙訓【おとくに】郡に属する永久元年の玄蕃寮牒案(平遺1801)によれば,「弓絃羽里」2・3・11・17・18・19・20・21・22・32の各坪に陵戸田が所在したことが知られ,里名に「ツルハ」とよみを付している同里は文治4年の右大臣藤原実定家政所下文案(鎌遺323)に見える「弓絃明里」,建保4年の主殿寮要劇田坪付注進状(鎌遺2237)に見える「九条弓絃羽里」と同一里をさしたものと考えられる室町期と考えられる乙訓郡内条里図(日本荘園絵図集成上)には,村田里の西,猪鹿里の南に図示され,「カイテヰ」という注記がある同里は向日市鶏冠井【かいで】の東側一帯に比定される...


羽生選手の名前は「弓弦」ではなく「結弦」なのだが、ネットの調べものはとんだところまで脱線してしまった。

ところで、男子フィギュアの記事を書こうと思った理由は、例の「佐村河内守新垣隆」の音楽を使った高橋大輔選手に言及しようと思ったからだ。高橋選手は6位入賞であり、悪い結果ではなかったと思うが、前評判と比べてどうだったかは知らない。