kojitakenの日記

古寺多見(kojitaken)の日記・はてなブログ版

内田正人と星野仙一

日本大学アメリカンフットボール部監督の内田正人が犯した悪行は想像を絶するほど酷いが、内田の同様の悪行を数限りなく犯した人間を思い出したのは私だけだろうか。そう、4か月前に死んだ星野仙一だ。

無防備の相手選手に背後から襲いかからせた内田正人の悪行に対応するのは、中日ドラゴンズ監督時代に、自軍の投手(宮下昌己鹿島忠ら)に相手打者の頭部を狙わせた星野仙一の指示だった。宮下は2013年に日本テレビの演出で、1987年に死球を与えて乱闘になった元読売のクロマティ(マウンドに走り寄って宮下を殴った)と「和解」したが、その時かそれ以前かに、クロマティに当てるつもりだったと白状している。当然、星野仙一が指示したものだろう。

また、鹿島忠のケースは宮下よりもさらに悪質だった。以下、鹿島忠 - Wikipediaから引用する。

1990年5月24日のナゴヤ球場での中日対巨人戦で、バンス・ローへの槙原寛己危険投球に抗議していた星野仙一監督が、当時巨人のコーチだった松原誠のヤジに激怒し、無関係だった水野雄仁にビンタを食らわせたことから乱闘に発展した。この時無関係な中日のベニー・ディステファーノが大暴れし、当事者ではないのに1人だけ退場となった。この試合でその後鹿島がクロマティの頭部付近に投球し、もう1度乱闘が発生している。鹿島は危険投球で退場処分となったがこの時もベンチに下がる際にクロマティをにらみながら頭を指差す仕草をしていた。

赤字ボールドにしたシーンは、当日のテレビ中継だったスポーツニュースだったかで目撃して背筋が凍った記憶がある。私は当時から大のアンチ読売だったので、前記宮下との乱闘の際には宮下よりもむしろクロマティに腹を立てたくらいだったが、その頃にはまだ星野仙一の本当の恐ろしさをわかっていなかった。本当に星野の恐怖を思い知ったのは鹿島が自分の頭を指差した映像を見た時だったかもしれない。

なお、指で自分の頭を指す仕草は、クロマティがヒットやホームランを打った時によくやった仕草で、80年代前半にアンチ読売ファンの頭に血を昇らせていたものだったが、1985年に大洋の遠藤一彦がこれをやり返したことがある。しかし、遠藤の場合は卑怯な鹿島忠星野仙一とは対極の、正々堂々とクロマティと勝負して三振に打ち取った時にやったものだった。

遠藤一彦はクロマティを黙らせたエース!引退試合は三浦大輔のデビュー戦だったより

遠藤一彦は、「巨人最強の助っ人」と称されたウォーレン・クロマティの全盛期に、手玉に取って黙らせたエピソードが有名です。派手なガッツポーズやスタンドに向かってのバンザイ三唱など、数々のパフォーマンスで大人気だったウォーレン・クロマティですが、一方で、相手を挑発するかのような行為も目立ち始めていました。

中でも対戦チームが怒りを募らせたのが、ヒットを打った後に指で自分の頭をチョンチョンとつつくポーズでした。「頭の中身が違うんだよ」とばかりにニヤッと笑う行為に、相手は「ナメてんのか」と怒り心頭。いかにも小馬鹿にしたかのようなパフォーマンスに、「いつか見てろ」と敵愾心を燃やしたピッチャーも少なくありませんでした。しかし、来日して日本野球にも慣れ、打棒好調なウォーレン・クロマティを黙らせるのは容易なことではありません。

前年まで4年連続2桁勝利を記録し、ハマのエースとして脂がのっていた遠藤一彦。迎えた1986年4月25日の対巨人戦に先発登板し、1回表にウォーレン・クロマティと相対します。2球連続してフォークボールで簡単に2ストライクを取り、次の球は、セオリー通りならば1球外すかストレートを投げる場面でした。

ウォーレン・クロマティもそのように配球を読んでいましたが、その裏をかくかのように、次の1球はウイニングショットのフォークボール。完全に読みが外れたウォーレン・クロマティは手も出せず、ストライクバッターアウト!憮然としてベンチへ引き揚げるウォーレン・クロマティに、遠藤一彦は指で自分の頭をつついて「ココが違うんだよ」のポーズでニヤリ。強烈なしっぺ返しを食らったウォーレン・クロマティは、複雑な表情で黙り込むしかありませんでした。

これでこそプロだが、憎まれっ子世にはばかるとの諺通り、現役引退後に幅を利かせたのは遠藤一彦ではなく悪の権化・星野仙一の方だった。

頭部死球は、下手すれば打者の命を奪う。かつて広島の外木場義郎から頭部死球を受けた阪神田淵幸一が一時生死の境をさまよったことを機に、打者のヘルメットに耳当てがつけられるようになった一件はあまりにも有名だ。だから、星野仙一が自軍の投手に命じて投げさせたビーンボールの数々は、決して許してはならない。

しかし、そんな星野仙一が死んだ時、テレビなどのマスメディアは星野を美化しまくった。そんなメディアが今になって内田正人を叩いても、ダブルスタンダードだとしか私には思えない。

とはいえ内田正人の悪行も、星野仙一に負けず劣らずひどい。星野も自軍の選手に自らの息のかかった人の娘をめとらせる政略結婚を選手に強い(エースだった今中慎二はそれに従った)、縁談を拒否した選手(門倉健など)をトレードに出すなど、人事権に大いに関与した。そもそも星野が1986年のオフに中日監督に就任した時、反りの合わない主砲の谷沢健一を辞めさせて、その代わりに大型トレードで落合博満を獲得させるという力業をやってのけたが、これなど監督就任早々フロントが主導するはずの人事に露骨に介入した例だ。プロ野球界の「剛腕」と言っても過言ではなかった。

一方、日大における内田正人の人事権の壟断を伝えるのが下記記事だ。

【緊急取材】日大アメフト部、雲隠れの内田正人監督の悪評~非常勤講師を大量雇い止め:データ・マックス NETIB-NEWS

【緊急取材】日大アメフト部、雲隠れの内田正人監督の悪評〜非常勤講師を大量雇い止め

 悪質タックル問題で揺れる日本大学アメフト部(通称:フェニックス)。タックルを行った選手は連日のバッシングに憔悴し、退部の意思を伝えたという報道もある。しかし、もう1人の当事者であり、なによりも責任者である同部の内田正人監督は、悪質タックルが問題化して以降、公の場に姿を現していない。

 試合後のコメントでは「あれぐらいやらないと勝てない。やらせている私の責任」などと発言していた内田監督だが、勇ましい言葉に反して学生ひとりに責任を押し付けるとは、監督として以前に人間性に疑問符がつく。

 内田監督とはどのような人物なのか。じつは内田氏がアメフト部の監督になった経緯について、ある噂が絶えないという。

 「内田監督は2003年に監督に就任した後、いったん退任しているんです。16年にそれまで助監督を務めていた高橋宏明さんが後任の監督になりましたが、いつの間にか内田さんが復帰していた。高橋さんが、内田監督の『親分』である田中英壽・日大理事長の逆鱗に触れてクビを切られたという話が、まことしやかに伝わっています。高橋さんは大学事務局の職員だったのですが、そこも左遷されました」(日大関係者)

 悪評は専門のアメフトだけにとどまらない。内田監督は日大の常務理事でもあり、学内人事を担当しているが、まさにその人事をめぐって日大が揺れているのだ。

 「日本大学は、これまで数年に1人程度だった非常勤講師の雇い止めを今年3月、大量に行いました。悪質タックルをした学生も所属するスポーツ科学部でも、英語講師が15人切られています。しかし、人事の責任者であるにも関わらず、内田氏が交渉の場に現れたことはありません」


 そう語るのは、非常勤講師の組合である日大ユニオンの関係者。大学全体での雇い止めの数は完全に把握できていないが、同じ時期に少なくとも数十人単位で雇い止めが行われたという。
 その背景にあるのは13年の労働契約法改正だ。もともとは有期雇用者保護のための法改正であり、改正後は5年以上の有期雇用契約者が無期契約に転換する申し入れができるようになった。しかし、雇う側から「無期契約=雇い止めが難しくなる」と受け止められたため、5年経つ前に雇い止めすることが相次いでいた。

 「日本大学の理事会は体育会に牛耳られています。相撲部出身の田中理事長もそうですが、アメフト部関係者も権力を持っている。内田氏はまさに人事担当理事であり、今回の雇い止めの責任者といえます。『首を切りにくくなる前に切る』という、恣意的な雇い止めを許すことはできません。訴訟も準備中です」(日大ユニオン関係者)

 学生運動の経験もある日大OBは、「毎日、テレビでフェニックスが叩かれているのを見るのは苦しい。学生を矢面に立たせて、監督は何をしてるんだ」と憤る。学生数は国内最多の約7万人、附属校や関連施設の教職員と職員を合わせれば約1万2,000人が働く巨大組織「学校法人 日本大学」。内田監督が学生に罪をかぶせて自身の責任から逃れたとすれば、でかいのは図体だけのみじめな組織ということになる。

 まさか、悪質タックルをした学生に「日大職員にしてやるから、今回はお前が独断でやったことにしてくれ」などの裏取引をもちかけたりはしないだろうが。

▼関連リンク
【日大の闇】悪質タックル問題の元凶は、日大・田中理事長体制

(NET IB News 2018年05月16日 17:06)

ここまでくると、チンピラが組織を乗っ取って巨大組織を壟断する「巨悪」としか言いようがない。

もっとも、この国では既に行政権力が同じ様相を呈しているが。言うまでもなく、2014年に内閣人事局が創設され、以後官僚の人事権を官邸(現在は安倍晋三政権)が壟断していることだ。そのせいで、官僚が総理大臣夫妻を守るために嘘をつかされ、国会の審議での答弁が虚言で埋め尽くされるようになった。

それを生み出した一因が、政界の「剛腕」が主導した「政治改革」(衆院選への小選挙区制の導入)や「政治主導」のスローガンだったことは覚えておきたい。

なお、内田正人は日大アメフト部の監督については辞意を表明したが、日大の理事を辞めるとは一言も言っていない。これでは膿を出すことはできない。内田の日大での役職を全て解かなければ事態は何も改善されないはずだ。安倍晋三が政権を再び投げ出さない限り日本政府の膿が出されないのと同様に。

まあ、今回の件に日本スポーツ界の体質が象徴されているとも思うが。下記ツイートの言う通りだ。

https://twitter.com/jiro6663/status/996503693288652800

ジロウ
@jiro6663

アメフトのやつ。やらせた人、やらせ方、やったこと、やらされた選手の見捨てられ方も含めて、僕の知っている「スポーツ」のすべてが詰まっているので、今さら何も言うことがなくて、最近は高校野球といい相撲といい、ほんとにスポーツがスポーツしていて、うん!スポーツ!って感じですね。

14:32 - 2018年5月15日


最後に、この件で張本勲が内田正人に「喝」を入れていたが、その張本は星野仙一が死んだ時には星野が中日の投手たちに投げさせた故意死球には何のおとがめもなかったことは、典型的なダブルスタンダードだとしか言いようがない。このプロ野球界の「剛腕」を総括せずしてスポーツ界の暴力体質の改善はあり得ない。同様に、政界の「剛腕」を総括せずに(仮に)安倍政権だけが退陣したとしても行政機構は何も良くならないだろう。