kojitakenの日記

古寺多見(kojitaken)の日記・はてなブログ版

東京8区騒動の元凶は、どうみても「立民党内のアンタッチャブル」小沢一郎だ

 今回の「東京8区騒動」における立憲民主党のガバナンスから思い出したのは、前世紀末に私が属していた組織のことだ。

 その組織には、アンタッチャブルの領域があった。私の直接の上司(課長級)は10人弱の部下を抱えていたが、うち1人に対する制御が効かなかったのだ。上司より年上のその社員は、事実上上司の上司(部長級)の直属のようなものだったが、組織図上は上司の部下であった。そのアンタッチャブルの社員は直接の上司との折り合いは全く悪く、平然と上司の批判までしていた。社内のネットニュースでは(仕事とは直接関係のない話だったが)2人が公然と批判の応酬までしていたのだった。上司を介さずに起こしたそのベテラン社員の不手際を上司が他部署の人から批判された時、上司が「そんなこと言われたって××さんはアンタッチャブルなんだから」とぼやいたことを覚えている。

 立憲民主党の「一兵卒」小沢一郎は、枝野幸男にとってアンタッチャブルの部下であるに違いない。ただ奇妙なのは、枝野は立憲民主党の党首(代表)であって、その上には誰もいないはずなのに、なぜ小沢一郎を制御できないのかということだ。これはもちろん小沢が徒党を組んでいるからであって、小沢を担ぐ人間の中には、枝野らの悪口を小沢に吹き込んで、両者の溝をますます深めようとする輩もいるのではないか。結局、小沢が組んでいる徒党がある程度の規模を持っているから、小沢が一定程度好き勝手に動くことができる。

 衆院選の選挙区では、大阪12区の候補予定者になる支部長に極右の宇都宮優子が就いているが、これは明らかに「小沢枠」であろう。岡山5区のはたともこもそうかもしれない。もっともはたは「生活の党」を「生活の党と山本太郎となかまたち」に改称させることを小沢にのませたやり手らしく、その後三宅洋平を応援すべきかどうかをめぐって山本太郎と喧嘩別れして立民入りした人物らしいから、小沢や山本が統御しきれる人物というわけでもなさそうだが。とはいえ、それでもはたは立民の本流ではなく「小沢系」とみて良いだろう。

 その小沢が衆院選の候補の割り当てにかなりの程度介入する権限を持っているらしいことが、今回の騒動で浮き彫りになった最大のポイントだ。大阪12区なら選挙区当選はおろか比例復活も絶対にあり得ないから、枝野としても「ガス抜きとして認めてやっても良い」程度にみていたのだろう。また岡山5区にしても倉敷市の一部を含むとはいえそれは「平成の大合併」で倉敷市編入された地域であって、全体としては岡山県の中でも田舎の地域であって、自民党が非常に強くはたの当然も宇都宮優子同様、絶対にあり得ない。大阪12区も岡山5区も、立民にとっては「捨てゲーム」の選挙区だ。

 しかし東京8区はそうはいかない。岡田晴美候補予定者と地元の支持者たちのつながりが深いことは、今回山本太郎野党統一候補に擁立する動きに対して激しい反発が出て、デモが起きて朝日新聞デジタルに報じられるほどになった。過去の衆院選でも、岡田候補予定者(2017年)は山本(2012年)よりもずっと惜敗率が高かった。そんな東京8区で山本を野党統一候補にすることは、山本の経済思想上の同志である池戸万作によると、強い候補を下げて弱い候補を立てることにほかならず、立民にとっても「野党共闘」全体にとってもマイナスになる。つまり普通であれば山本の擁立劇など起きるはずがなかった。

 しかしそれが未遂には終わったが一度は起きた。これはやはり、枝野にとって小沢がアンタッチャブルであり、小沢の影響力を排除できなかったためだろう。

 なぜ小沢にそんな強い権力があるかというと、それは小沢が共産党とのパイプを持っているからだ。枝野と志位和夫とのパイプは小沢と志位のそれと比べて細い。それでも現在の立民と共産を軸とした「野党共闘」が機能しているのは、もともと2015年に共産党が「国民連合政府」を言い出した時、当時の「生活の党と山本太郎となかまたち」の代表だった小沢一郎が共産と民主系とをつなぐパイプ役になったからにほかならない。いや、形の上では共産党が「国民連合政府」を言い出したのかもしれないが、実際の発案者は小沢だったのかもしれない。2006年に小沢が民主党代表に就任した当時も「野党共闘」の構想があり、当初共産党も対象に含まれるはずだったが、小沢と共産党では政治的立場が違いすぎて共闘は成立せず、共産党は「たしかな野党」を標榜していた。

 しかし2009〜12年の民主党政権時代、小沢対反小沢の構想が東日本大震災や東電原発事故への対応そっちのけで行われたため、国民の激しい怒りと反発を買って民主党政権が瓦解し、その反動として「安倍一強」時代に入ってしまった。野党がすっかり劣勢になってしまったために、小沢が再度呼びかけた「野党共闘」に共産党が乗っかったのかもしれない。つまり形の上では共産党主導だったが、実は小沢主導だったという可能性もある、というよりその可能性がかなり高いと私はみている。

 だから立民と共産との候補者調整にも、小沢の手腕が欠かせない。立民の党内についていえば、小沢が共産党候補に降りてもらって枝野に得をさせる見返りを要求するのは当然だろう。大阪12区や岡山5区については、立民が議席を得られる可能性はこれっぽっちもないから、小沢に見返りを与えても枝野の懐は痛まない。しかし東京8区ではそうはいかない。現に立民が岡田晴美候補予定者を下ろそうとしたら(そう言い切ってしまっても良いだろう)、地元から激しい反発を受けた。

 池戸万作は「立民は東京8区をプロテクトしなかった」と書いたが、たとえば東京5区(手塚仁雄)や東京7区(長妻昭)は絶対に他党に譲らない選挙区として「プロテクト」するが、東京8区はプロテクトしない、みたいなプロ野球選手のFAによる移籍に伴う人的補償に対するプロテクトを思わせる話が本当にあったかどうか、私は知らない。

 巷間、東京5区や7区に某組から候補予定者を立てられている長妻が、彼らに降りてもらうためにその見返りとして東京8区を某組に差し出した、つまり悪いのは長妻や手塚だという説もある。しかし、私の見るところ説得力は乏しい。某組は東京8区の山本を除いて、某組がベタ降りするという取引だったとの説もあるが、これには某組の候補予定者のうち本気で戦おうとしている候補者からの激しい反発が必至だ。たとえば東京22区の櫛渕万里は絶対降りないと言っているらしい。つまり仮に山本が取引でそれを持ち出したとしても、長妻や手塚が「はい、わかりました」とばかり了承するとは全く考えられない。もっとも、過去に民進党が東京6区をあっさり維新の党の江田憲司に差し出した経緯もあるから(現在も江田系の落合貴之が東京6区選出議員になっている)、立民の交渉能力にも問題があるかもしれない。とはいえ、東京8区を簡単に某組に差し出したはずまではなかろうと思う。山本太郎が交渉の様子を録音したテープを持っていて、それを公開するぞとの脅しをかけているそうだが、それはせいぜい長妻や手塚が「お話はわかりました。持ち帰って検討します」と言った程度の話だろう。かりに左記の発言があったとして、「お話はわかりました」の箇所だけ公開すれば、それを立民の都連が某組の要求を受け入れたと強弁する理由になり得る。その程度の話に違いない。

 手塚や長妻の権限では、東京8区を某組に差し出す取り引きなど成立するはずがなかった。そこには、もっと強い権限を持った「剛腕」の持ち主の関与を仮定しなければ、今回の「東京8区騒動」は読み解けないのではないか。そう考える次第だ。

 なお、少し前にブログ『日本がアブナイ!』が今回の衆院選で立民の選対を務めている平野博文に対する懸念を表明していた記事があったので、以下に紹介する。弊ブログがこのブログの記事を肯定的に引用するのはずいぶん久し振りだ。少なくとも2013年以降には記憶がない。

 

mewrun7.exblog.jp

 

 以下引用する。

 

 先週、立民党に関して、mew的にはちょっとイヤ~な感じがするニュースが出ていた。^^;

 

 平野博文選対委員長が、24日、小沢一郎氏に選挙対策への協力を要請したというのだ。(@@) 

 

 以前から書いているように「もう小沢氏はあまりオモテに出て来ない方がいい」と考えているmewは、このニュースを見て、「え~~~?枝野くんもOKしてることなの?」と疑問に思ってたら、どうも枝野代表は「報告は受けていない」と不快感を示していたとのこと。

 

 立民党にとって、ここか大事な時期を迎えるだけに、小沢氏&平野氏の今後の言動のよくない方向につながらないといいな~と懸念し始めているmewなのである。_(。。)_

 

(「日本がアブナイ!」 2021年9月26日)

 

出典:https://mewrun7.exblog.jp/29673654/

 

 ここで同ブログは、昨日弊ブログでもご紹介した読売新聞の9/24と9/26の記事を引用しているが、ここではリンクのみ再掲する。

 

www.yomiuri.co.jp

 

www.yomiuri.co.jp

 

 さすがに長年民主党系を応援し続けてきた上、その来歴は菅直人やその系列のごひいきで、民由合流時には小沢一郎を警戒していた*1というブログ主だけのことはあって、このあたりのアンテナの張り具合はたいしたものだ。「野党共闘」界隈は共産党系から来た人が多いので、このブログをチェックしておられる方はほとんどいないのではないかと思うが。

 「日本がアブナイ!」からの引用を続ける。

 

 枝野代表は、党運営、とりわけ選挙で豪腕を発揮したがる小沢氏と少し距離を置いて、オモテに出さないようにしているところがあった。^^;

 小沢氏がオモテ立って自分の考えを主張したり、動いたりすると、党内で小沢氏に対する反発が起きて、また亀裂が生じてしまうのを警戒したからではないかと察する。_(。。)_<菅ー枝野内閣を潰そうとした人だしね~。^^;>

 

 実は、小沢氏は地元岩手で、もうトラブルを起こしているのである。(~_~;)

 

出典:https://mewrun7.exblog.jp/29673654/

 

 このあと、周知の岩手1区で、小沢がかつての手下・階猛と確執を繰り広げている件に言及しているが引用は省略する。興味のおありの方は直接リンク先を参照されたい。以下が平野博文に関する核心部だ。

 

 そもそもmewは、平野博文氏を選対委員長という重要な役職につけたこと自体、あまり望ましく思っていなかったのだ。(-_-;)

 確かに平野氏は、鳩山由紀夫氏の側近&小沢Gのパイプ役、戦略家として民主党政権交代実現の際にはいい働きをした上、鳩山政権では内閣官房長官を務めていたし。元民主党、国民党の議員には顔もきくので、選対委員長には適任の部分も大きいかも知れないのだが。

 

 ただ、実はこの人は、民主党が大きな対立を起こし、分裂するきっかけを作った立役者でもあるのだ。^^;

 10年6月に鳩山首相小沢幹事長が退任し、菅直人氏が首相になった際、当初は鳩山氏も小沢氏も菅首相を支持すると明言していたのである。

 しかし、平野氏が、自分他たちの側にもう一度権力を取り戻したいがために、小沢氏と鳩山氏を炊きつけて、小沢氏の総裁選出馬を画策。そこから民主党内で大きな対立が表面化し、エスカレートしたのである。(-_-;)<小沢氏は自民党と組んで「菅おろし」の内閣不信任案を出そうとしたりとかね。^^;>

 

『7月の第22回参議院議員通常選挙参院の与党の議席数が過半数を割り込む大敗を喫したため、徐々に菅直人首相ら執行部への批判を強め、9月の民主党代表選挙への小沢一郎の擁立を画策。報道によれば、当初は菅の再選を支持していた鳩山を小沢支持に翻意させるための鳩山・小沢の会談をセッティングし、鳩山の支持も取り付けたが、小沢は菅に敗れた。wikipediaより』

 

 菅政権に対する評価は人それぞれ違うだろうけど。ただ、mewは今でも「もしあの時、小沢氏が出馬などせず、少しおとなしくして形だけでも党内融和の姿勢を示してくれていれば、もう少し違う展開になっただろうし、今ほど民主党政権への印象は悪化しなかったかも知れない」と考えている。(-_-;)

 

 そして、そのことを考えると尚更、小沢氏がオモテに出て(しかも平野氏と組んで)動くのは、立民党にとって好ましくないように思うし。枝野代表や福山幹事長は、2人に妙な遠慮をせず、抑えるところはビシッと抑えて行かないと、立民党に対する支持、期待は上がらないのではないかと思うmewなのだった。(@_@。

 

(「日本がアブナイ!」 2021年9月26日)

 

出典:https://mewrun7.exblog.jp/29673654/

 

 このブログ記事を最初に読んだ時、この記事は小沢一郎鳩山由紀夫が責められるべき問題の責任を平野博文に押しつけてるだけなんじゃないかと思った。

 しかし、こうして「東京8区騒動」があわや大火になるかと思われる、「ヒヤリ・ハット」どころか少なくとも「軽微な災害・事故」にまで立ち至った経緯には、選対の平野博文が火に油を注いだ部分があったのではないか。平野と小沢の名前が出てきた上、直接の選対の責任者が平野だったことを考えると、この点でも「日本がアブナイ!」は立憲民主党をよく見ていたのではないかと思い直した。つまり、ブログ主の慧眼を見直したのだ。やはり「餅は餅屋」なのかもしれない。

 同ブログは、今朝の記事のタイトルにも小沢の関与をタイトルに掲げている。

 

mewrun7.exblog.jp

 

 以下引用する。なお、引用文中の冒頭にある、「これまでぐらい的に名前が出ているのは、小沢一郎氏だけだ」という指摘は、神子島慶洋氏も指摘していた。朝日新聞デジタルの南彰記者が東京8区騒動の記事を書いたことは大いに有意義だったと思うが、一点どうしてもいただけないのは、朝日は前回の「希望の党」騒動の報道に引き続いて、小沢の名前を全然出さないことだ。あたかも「小沢隠し」をしているかのように私には見える。

 

 ちなみに、山本氏と立民側の協議について、これまで具体的に名前が出ているのは、小沢一郎氏だけだ。

 

『山本氏は立候補に向け、立憲民主党など他の野党と調整を進め、立民のベテラン小沢一郎氏とも9月中旬に会談して立候補する小選挙区を検討していた』 (共同通信21年10月8日)』

 

~ * ~ * ~ * ~ * ~ * ~

 

 山本氏は15年、小沢氏と「生活の党と山本太郎となかまたち」を結成。共に政治活動を行なっていたことがある。(・・)

 

 小沢氏は、93年に細川護煕氏を担いで野党連合で政権をとった成功体験があるのだが。近時は、山本氏を野党共闘のTOPにおいて戦うことがアタマにあったようで。昨年の都知事選でも、野党統一候補として山本太郎氏を擁立することを考えていたようだ。^^;

 

<小沢氏は昨年7月、サンデー毎日のインタビューで『「(山本)太郎君を4月から口説いていた。太郎君も都知事選に出たい、と言う。出たいならいい、君にとっての最高のチャンスだと。僕が絶対に野党をまとめ統一候補とする、と言い、よろしくと言われて別れた。がその後になって『れいわの公認で出る』と言う」 「本人に最終確認してないがいいか、と聞いたら、(立憲、国民、社民、共産)皆OKだった」・・・「仮に負けてもいい勝負で200万票くらいで小池氏と競り合えば、皆で太郎君を(首相に)担ぐか、という声も出かねない」「野党共闘にも求心力が生まれる格好の機会だった」』と語っている。(*1に記事の関連部分アップ)>

 

 山本氏が、衆院選出馬について小沢氏と相談していた可能性は極めて大きい。ただ、東京8区から出馬する話が、小沢氏と懇意の平野選対委員長まで通っていたのか。さらには枝野代表の了承も得ていたのかは「???」だ。

 

(『日本がアブナイ!』 2021年10月12日)

 

出典:https://mewrun7.exblog.jp/29711634/

 

 昨年の都知事選では、山本を「野党統一候補」として出したかった小沢に対し、山本は「仮に宇都宮健児氏が出馬したとしてもどうしても出たかった」ために、山本から出馬辞退の打診を受けた宇都宮氏がそれを蹴飛ばして(当たり前だ!)出馬しても退かず、出馬を強行して宇都宮氏に及ばない得票しか得られなかったのだった。この経緯に激怒した小沢は、一度山本との関係を断ったとされていた。

 それがいつの間にか両者の関係が修復され、今回再び浮上したというのが真相だろう。仮に山本が野党統一候補になったのなら、それは小沢の意に沿う結果だった。しかし、都知事選で宇都宮健児氏に降りる意向が全くなかったのと同様、今回は吉田晴美に降りる意向など全くなかった。おまけに、地元から猛烈な反発が巻き起こり、山本は出馬撤回に追い込まれた。山本の出馬宣言までは都知事選と瓜二つの構図だったとみなければならない。ただ、山本が出馬辞退に追い込まれた結末は都知事選とは違っていた。

 今回の山本の撤退を「賢明な判断」ともてはやすのは山本に対する過大評価だ。山本はあくまで「追い詰められて観念した」だけだと私は思う。

 結論。立憲民主党は今回の「軽微災害」を分析した上で再発防止策を講じなければならないが、分析を行う上で小沢一郎というファクターを外してはならない。また、外部から騒動を分析する際にも、小沢を考察から外しては何の意味もない。

 今回の騒動は、まぎれもなく「小沢案件」だった。

*1:但し、民主党政権時代前後にはブログ主は「菅氏も小沢氏も」と称してずいぶんオザシンに迎合していた。これがこのブログから私の心が離れた最初のきっかけになった。