kojitakenの日記

古寺多見(kojitaken)の日記・はてなブログ版

連合 定期大会で芳野友子会長が再任 2期目に入ることが決定 (NHK, 10/6)

 現在の立憲民主党(立民)を論じる時、2021年衆院選をどう評価するかが立論の分かれ目になる。たとえば現立民代表の泉健太は8月に「思わぬ敗北を喫した。そのダメージは非常に大きかった」と評した。弊ブログはこの泉のコメントを受けて、立民は21年衆院選よりも泉が代表になった後の22年参院選の方が立民の得票減はずっと大きかったことを指摘して下記記事にて泉を批判した。

 

kojitaken.hatenablog.com

 

 しかし21年衆院選で枝野立民が敗北したのは事実だ。そしてその敗因の一つとして衆院選の直前に連合会長に就任した芳野友子が選挙の妨害工作を行ったことが指摘されていることを知った。コメント欄にて教えていただいたリンクの記事に書かれていた。

 これを指摘したのは連合OBで、芳野と同じ産別(JAM)出身の早川行雄だ。但し出身産別が同じといっても社会党との関係が深かった総評系の人で、同盟系の富士政治大学で学んだことから統一教会との(間接的な?)関係が取り沙汰された経歴がある右翼色の強い芳野とは思想信条は全く異なる。連合といっても一色ではないことは立民と同じだが、ともに現在は右派色の強い人物(立民は泉健太)がトップにいることも立民と同じだ。

 このことは『現代の理論』という旧総評系の人たちが主に作っている雑誌で指摘された。以下引用する。

 

gendainoriron.jp

 

1.芳野新体制の始動

反共演説と選挙妨害

過てる会長選出に対する天罰とでも言うべきか、就任早々、芳野会長の野党共闘に対する「口撃」が始まった。立憲民主党共産党と限定的な閣外協力で合意したという報道を受けた10月7日の記者会見で芳野会長は、「共産党の閣外協力はあり得ない」とした上で「現場では選対にも共産党が入り込んで、両党の合意をたてに、さらなる共産党政策をねじ込もうとする動きがある」などと共産党に対するアレルギー感情全開の発言を行った。閣外協力とは野党時代と同様に、合意できる政策については政権交代後も院内で連携して実現を目指すという以上の意味はないのだから、これはほとんど言い掛りのような批判である。

そもそもこの芳野発言は連立政治の常道をわきまえない俗論である。政治学者の杉田敦(法政大学教授)は「基本政策に違いがあるから野党共闘は「野合」などという議論が多いが(略)ヨーロッパ諸国では、基本政策を異にする政党が連合政権を作るのは常態である」(「生活経済政策」2022.Jan.)と述べている。このような俗論がはびこるのは、内閣総理大臣が「私は立法の長」(安倍晋三)と言ってはばからない国で、法律や条約を最終的に決めるのは議会であって内閣ではないという議会制民主主義の原点が失念されているせいかも知れない。

連合周辺の思惑としては、会長に一度ガス抜き発言をさせて、総選挙投票日まで選挙戦に悪影響を及ぼすような言動は封印する予定だったようだが、この目論見は見事に裏切られた。その後も「労働組合である連合は共産主義とは相いれない」「連合は民主主義であり共産党とはまったく考え方が違う」など、会見を取材しているベテラン記者いわく「反共大演説」が繰り返された。複数の連合役員に芳野会長の不規則発言を止められないのかと聞いてみたが、「出来ることはやっているんですが」「いろいろ手立ては講じていますが」と会長の頑迷固陋ぶりに困惑を示すばかりであった。

総選挙の最中にも、私が副事務局長を務める退職者連合のいくつかの地方組織から「芳野会長を黙らせられないか」「芳野会長は黙っているのが最大の選挙協力」などの声が寄せられる事態に至った。芳野会長は「反共演説」に留まらず、ある選挙区の立憲候補選対が地方連合の了解のもとに共産党にも公選はがきを割り振ったところ、推薦を取り消すなどと圧力をかけて回収させるという選挙妨害も行った。

市民連合で中心的な役割を担い、神津前連合会長とも親交のある山口二郎(法政大学教授)は白井聡(精華大学専任講師)との対談(朝日カルチャーセンター2021.11.19)で、芳野会長の発言やそれを止められない連合幹部に苦言を呈した。竹信三恵子和光大学名誉教授)も「野党共闘に待ったをかけるといった目的外のことに足を突っ込んだために、女性トップへの期待に水を差すとともに、いろんな政治信条を持つ労働者に分断を持ち込むマイナスも招きつつある」(サンデー毎日2022.2.20)と批判するなど、有識者の見方も次第に厳しさを増していった。

総選挙総括

総選挙で立憲民主党は、共産党などとの候補者一本化を実現した小選挙区では善戦したものの、比例区の不振により議席を減らして敗北した。この衆院選総括を巡っても芳野会長は議席を減らした野党共闘は失敗であったとの立場に固執し、産経新聞の単独インタビューでは立憲民主党に対し「(共産党とは)もう、決別してほしい。議席を減らしたのだから、科学的調査にもとづいてしっかりと総括をしてほしい」(2021.12.14)と語っている。連合の総選挙総括も芳野会長の反共思想に配意した結果、イデオロギー的なバイアスがかかったものになった。

しかし統計手法を用いた科学的総括としては、共産党小選挙区で候補者を下したことが立憲民主党の票を有意に上積みする結果になったとする菅原琢政治学者・政治過程論)の分析(「世界」2022.1および「生活経済政策」2022.Jan.)を挙げれば十分であろう。むしろ前出の杉田教授は「連合の会長が、選挙直前の時点で、立憲民主党共産党との連携を強く批判し、これが野党の伸び悩みにつながった可能性がある」(前掲誌)と述べ、与党や一部保守系メディアの反共ネガティブキャンペーンの一翼を連合会長が担うという異常事態が選挙結果に影響した可能性を示唆している。

連合の選挙総括について、米山隆一衆議院議員)は「事実に立脚しない主張を公言する組織の前途は危ういと思います」(twitter2021.12.17)と警鐘を鳴らしている。また芳野会長発言に対して山口二郎は「組合員の票の行き場がなくなったというが、小選挙区立憲民主党、野党系無所属の議席が増え、国民民主党の比例の票が19年参院選より大きく減っていることはどう説明するのか。ナショナルセンターの指導者なら、思い込みではなく、エビデンスに基づいて発言すべき。」(twitter2021.12.17)と反論している。

加えて、先の産経新聞インタビューで芳野会長が「共産党は指導部が決めたことを下におろしていくトップダウン型で、民主主義のわれわれとは真逆の方向」などと語ったことに対して、共産党の志位委員長は「連合の責任者が公党を非難する以上は、根拠を示す必要があります。根拠を示していただきたい。」(twitter2021.12.16)と不快の念を表明した。自民党に対して「問題認識はほぼ一緒」と公言する一方で、反共イデオロギーに偏向した選挙総括をしたり、根拠もなく公党を中傷する知性と品性の低劣さは連合会長としての資質を欠くものと言わざるを得ない。

 

URL: http://gendainoriron.jp/vol.30/feature/hayakawa.php

 

 芳野はなんと、自ら選挙妨害を行なっておきながら、立民と共産の選挙協力衆院選の敗戦だったという連合の衆院選総括を行った。もちろんこれが現実をねじ曲げた誤った認定であることは上記引用文が指摘する通りだ。マスメディアの論調も概ねその線に沿っており、立民の新代表・泉健太もその流れに乗って誕生した。泉は3か月前にも、立民が2021年参院選敗北で受けたショックから現在自分を中心とした執行部が立て直しを行なっていると言わんばかりのコメントをしたことは前述の通りだ。しかし事実は、2021年衆院選よりも泉が代表になったあとの2022年参院選の方が立民が失った票ははるかに大きいことは前述の通りだ。この件については三春充希氏の分析の労作がある。

 このように見ると、芳野智子と泉健太の動きはみごとにシンクロしていることがわかる。そしてもう一つの立民と連合に共通する問題は、そんな泉や芳野を下ろす動きが見られないことだ。連合の場合は早川行雄のようなOBが批判しても、あるいは歴代の会長らが芳野の自民党大会出席にブレーキをかけるなどの動きはあっても、芳野の再任を止めようとする動きにはつながらなかった。下記は6日のNHKニュース。

 

www3.nhk.or.jp

 

連合 定期大会で芳野友子会長が再任 2期目に入ることが決定

2023年10月6日 18時47分

 

労働組合の中央組織、連合の定期大会で芳野友子会長が再任され、2期目に入ることが決まりました。

 

5日から東京都内のホテルで行われていた連合の定期大会では、6日、新たな執行部が選出されました。

そして、金属や機械などの企業の労働組合で構成する「JAM」出身の芳野友子会長が再任され、2期目に入ることが決まりました。

また、教職員の労働組合日教組」出身の清水秀行事務局長も再任されました。

このあと芳野氏はあいさつし、「これまで築き上げてきたものを変えるのは難しいと思うが、時代に取り残されることなく変革を求め、スピード感を持っていくことがこれからの社会に必要だ」と述べました。

そのうえで、「私たちが自覚している以上に労働組合が連合の外の皆さんになかなか理解いただけていない。連合のハードルを下げて労働者や生活者のための運動を続け、すべての人にとって力となり、信頼される存在となるよう精いっぱい取り組んでいく」と決意を示しました。

新たな執行部の任期は再来年の定期大会までの2年間となります。

 

松野官房長官「労働界とのコミュニケーションは大切」

 

松野官房長官は午後の記者会見で「芳野会長には政府の重要会議に参画し、積極的に発言をいただいており、引き続き政策議論に協力いただきたい。賃上げなどの各政策の推進にあたり、労働界とコミュニケーションをとりながら進めていくことは大切と考えており、丁寧に議論を行っていきたい」と述べました。

 

芳野会長「政労会見」開催に向け政府側と日程調整

 

連合の定期大会で再任され、2期目に入った芳野会長は記者会見で、持続的な賃上げを実現するため、総理大臣と連合会長が意見を交わす「政労会見」の開催に向けて、政府側と日程を調整していることを明らかにしました。

この中で、連合の芳野会長は、持続的な賃上げに向けた取り組みについて「政府も使用者も労働者も同じ方向を見ている。『政労使』の意見交換は、とても重要で引き続き実施したい」と述べ、ことし3月におよそ8年ぶりに開かれた政府、経済界、労働界の3者による「政労使会議」を継続していくべきだという考えを示しました。

その上で、2012年に第2次安倍政権が発足して以降、開かれていない、総理大臣と連合の会長による「政労会見」について、政府側と日程を調整していることを明らかにした上で、「現場の実態を政府に理解してもらえるよう進めていく」と述べました。

一方、同席した清水事務局長は、国民民主党の玉木代表が5日、旧民主党の政党が2つに分かれていることをめぐり「連合の産業別労働組合の考え方の違いがつながっている」と発言したことについて「分裂したのは政党の方であり、連合ではない。連合は積み重ねた議論に基づき政策を進めている」と不快感を示しました。

 

URL: https://www3.nhk.or.jp/news/html/20231006/k10014217391000.html

 

 芳野が論外であることはいうまでもないが、そもそも連合が発足した1989年から日本の労働界は決定的におかしくなった。

 最近はひところネトウヨが絶叫した「日本スゴイ」がすっかり聞かれなくなり、その代わりに「安い日本」の議論が増えた。それを「良いものを安く作るのが日本の伝統だ」などと言い繕う馬鹿な論者もいるが、1990年頃とは真逆に、中国をはじめとする海外の富裕層たちが「安い日本」に安価な製品を求めて押し寄せてくるようになったのが現在の日本だ。この30年ほど、海外では物価も賃金も上がり続けてきたのに、日本では1994年にデフレに入ったあと、その後も賃金が上がらない状態が今なお続いている。

 たまたま私は1993年に2か月間アメリカ西海岸にいたので、当時のアメリカの物価の安さはよく覚えている。ハンバーガーもバーガーキングのワッパーをよく食べたが、こんなに安いのかと思うほど安かった。この1993年は今年からは想像もつかないような冷夏で、日本ではタイ米を食べなければならなくなったと騒がれていたが、私は現地でカリフォルニア米を買っていた。この米も安かった。今では嘘のように思われるかもしれないが事実だ。

 1993年は日本がデフレに入る直前で、日本経済の転落が始まる直前の時期だった。その転落をもたらした一つが、連合の労使協調路線によって労使関係に緊張感がなくなったことが挙げられるのではないか。つまり連合はずっと方針を誤り続けたあげくに、最低最悪の会長としか言いようがない右翼反動の芳野友子を担ぎ出し、その芳野を下ろす動きも起きないまま二期目を迎えた。芳野をはじめとする連合が(大企業正社員の)賃上げを自民党政権に頼ろうとしていることは、上記NHKニュースを見ても明らかだろう。

 現代日本の暗闇はまだまだ続く。