広原盛明氏のブログ記事を取り上げた記事がTwitterでバズったらしいが、どうせろくな評判は立っていないに違いない。
昨年の参院選東京選挙区で2016年まではトップ当選が当たり前だったのに大きく票を減らした蓮舫が参院選のあとずっと泉健太を批判し続けているが、泉の失敗に関して下記大井赤亥氏の下記3連ツイートがずっと頭に引っかかっている。
2017年衆院選は、野党にとっては旧立憲と希望の党に分裂された「失敗例」となったが、比例票は興味深い教訓を残している。すなわち、立憲と希望が左右に棲み分けてそれぞれ独自に支持者を開拓したためか、双方が集めた「非自民票」は2010年代で最多になっている。
— 大井赤亥 (@AkaiOHI) 2023年5月10日
すなわち、(2010年代の民主・民進の比例票は約1000万程度のところ)2017年衆院選では立憲1108万、希望967万(計2075万)となり、自民1855万を凌駕する。立憲と希望が中道左派から保守層まで独自に支持開拓した結果と考えられる。その割を食ったのは維新で、比例票338万は維新史上最少となっている。
— 大井赤亥 (@AkaiOHI) 2023年5月10日
換言すれば、政治的選択肢の健全な拮抗のためには、基本理念の共有を前提にした上で、具体的な政策的布置としては、旧立憲から希望までを包摂できるくらいの枠組が必要になろう。また、維新を脅威というのなら、そのくらい、大きく、緩やかな気持ちで立憲野党の仲間を広げる必要があろう。
— 大井赤亥 (@AkaiOHI) 2023年5月10日
「基本理念の共有を前提にした上で、具体的な政策的布置としては、旧立憲から希望までを包摂できるくらいの枠組」をもった「政治的選択肢の健全な拮抗」とのことだが、この「拮抗」とは自民党との拮抗を意味し、立憲民主党(立民)と希望の党(現国民民主党=民民)とが張り合った2017年衆院選での構図を指すものではないだろう。
しかし、2017年には希望と立民との戦いが注目を浴びたからこそ両党合わせて2075万票を得た。維新はこのバトルの枠組の外だったから338万票にとどまったのである。
逆に、自民党とその「分派」とが熱い注目を浴びた衆院選もあった。いうまでもなく2005年の「郵政総選挙」だ。この選挙で自民党は2588万票の比例票を獲得した。その前回の2003年は2066万票だったのを大幅に増やした。民主党は2003年には自民党を上回る2209万票の比例票を得ていたが、2005年にも減ったといえ2103万票を得ていた。要するに、新自民と旧自民との戦いが注目を集めた分だけ票が増えたのだ。
もし旧民主系が選挙で得る票を増やそうと思うなら、一番良いのは普段は立民と民民とが張り合ってその論戦で注目を集めつつ、選挙では棲み分けを行なうことだろう。もちろん大井赤亥氏が言う「基本理念の共有」は大前提であって、遠からぬ将来に先進諸国から爪弾きにされるであろう性的マイノリティ差別に熱中するネトウヨに媚びたりするような勢力まで含んではならない。
一方、最悪なのは2党がともに同じような方向性を持ってしまって、その枠組から外れた票を流出させることだろう。2021年の立民代表選での泉健太の選出はまさにそれだった。だから2019年参院選では1140万票あった立民と民民との得票合計は、2022年参院選では993万票と、1千万票を割り込んだ。
2017年衆院選と2021年衆院選とを比較すると、旧立民は2017年に1108万票だったのが2021年には新立民で1149万票で、泉健太を含む旧民民の一部を取り込んだにも関わらず比例票は微増に過ぎなかった。一方、2017年に希望が得ていた比例票967万票に対し、2021年の民民は259万票しか得られなかった。これを、泉ら新立民内の旧希望・民民勢力が「立民が左に寄り過ぎた結果だ」として右バネを強めた結果成立したのが泉大勢だといえるだろう。
しかし泉立民になって行われた参院選をその3年前と比較すると、2019年の旧立民791万票に対して2022年の新立民では677万票と、党が旧希望・民民を取り込んで大きくなったにも関わらず比例票を14%も減らした。一方、2019年の旧民民348万票に対して2022年の新民民は315万票で、立民同様に減らしてはいるが減少率は9%にとどまっており、党が小さくなったことを考慮すると健闘したといえる。率にして比較すると、立民はこれは、党首が枝野から泉に代わって党の方向性が一変する「何をやりたいのかわからない鵺のような」泉立民がかなりの割合の有権者に忌避されたとみるほかない。その意味で、下記ツイッター政治おじいちゃんお化け氏のツイートは誤りだ。
海江田代表時の民主党のことを思うと、今の立憲はコアの積極的な支持者はある程度掴んでいるよなあと思ったりはする。
— ツイッター政治おじいちゃんお化け (@micha_soso) 2023年5月16日
海江田代表の民主党はコアな支持者も今ほどおらず、民主党政権時についてネガティブな記憶もまだ根強かった。
それを思うと、コアな層の再構築は徐々にはできているとは思う。
立民は泉体制で衆院選を戦ったことがないので参院選での比較しかできないが、民主党が惨敗した印象が強い2013年参院選の比例票が713万票だったのに対し、前述の通り2019年参院選では枝野立民は791万票、2022年参院選での泉立民は677万票だった。立民の「コアな積極的な支持者」がどういう人たちを指すのかは不明だが、海江田時代と比較しても「コアな支持者」は減少しているようにしか私には見えない。
かなりまだるっこしい記述になったので言いたいことを要約すると「国民民主党は2つも要らない」ということに尽きる。既に民民(国民民主党)という、穏やかな言い方をしても「中道右派」*1の政党である民民に加えて、図体はそれよりもでかいくせに民民のスタンスにすり寄ってくるような不愉快極まりない野党第一党などお呼びでない。それよりも、中道右派対中道左派でも何でも良いが、両党が互いに切磋琢磨して自由闊達な議論を行い、選挙では協力していけば良い。そうすれば2000年代の民主党や2017年衆院選での立民と希望の合計のように、比例票を2千万票の大台に再び乗せることも可能かもしれない。そうではなく2000年代の民主党から今の立民に至るまでのように、党代表が代わるたびに方向性が右往左往する、それどころか泉立民の場合は最初は「提案型路線」、次には「維新との共闘」路線をとって、いずれもそれを継続することさえできないまま代表が責任をとらずに居座って迷走する政党ではどうしようもない、既に昨年の参院選で立民と民民の合計で比例票が1千万票を割ったが、次の衆院選でも似たような結果になるのではないかと思う。
だが立民支持層が泉を支持するというのであれば続投も止むを得ない。せめて衆院選で150議席とれなかったら公約通り泉は退陣してくれと願うしかない。
現在の野党は、実質的に国民民主党が2つとは言わぬまでも1個半あるような状態で、最左派の共産は異論排除と党内パワハラ黙認に明け暮れ、それなのに立民の泉健太と同様に党首の志位和夫が責任をとらないという、私の人生で見てきた中でも一番ひどい状態にあるといえる。次の衆院選が近いとされるタイミングにまでこの状態を引きずることは避けてもらいたいとずっと思ってきたが、こうなってしまった以上はもうどうしようもない。来るべき事態が来ることを覚悟している。