最近の光文社のサイトは反動的な傾向が非常に強いが、下記もその一例。
「もう一度総理をやってほしい人」の4位が菅義偉、3位が安倍晋三、2位は田中角栄で、さて1位は誰でしょう、とかいう馬鹿馬鹿しい記事で、1位は予想通り小泉純一郎だった。その4人を支持する声は下記の通り。
【第4位】菅義偉(74票)
「短命ではあったが、やるべきことはしっかりやって辞めた人だったと思う。実行力に期待して、本当に再登板があってもいいと思う」(30代男性・無職・埼玉県)
「不妊治療の保険適応、携帯電話代の値下げ。国民のことを考えて行動して、実行してくれました。もう一度、なってほしい」(30代女性・主婦・大阪府)
「コロナ禍という大変な時期、しかも一年間という短い期間にしては成果を出してくれたと思う。今ならどうやって国を導いていくのか見てみたい」(40代女性・パート・石川県)
【第3位】安倍晋三(81票)
「なんといっても歴代最長の実績は評価されるべき。党内をまとめる力があり、外交でも大国首脳をよい関係を築ける。本当に惜しい人を亡くした」(30代男性・会社員・愛知県)
「いろいろ考えても、日本のために一番尽力してくれた総理大臣だったと思います。あの方以上の総理はいない」(50代女性・無職・埼玉県)
「アベノミクスがどうだとか言われますが、なんだかんだいって安倍さんのころは上手くいってたんじゃないですか」(50代女性・主婦・大阪府)
【第2位】田中角栄(90票)
「日本の骨格そのものを変えられる人物。今のままでは日本は危ない」(50代男性・会社経営・愛知県)
「ロッキード事件などマイナスなことはあったが、あのカリスマ性は現代にも通じるのではないか」(50代女性・会社員・大阪府)
「吃音を克服するなどハングリー精神にあふれる人。今のお坊ちゃん政治家たちに喝を入れて欲しい」(40代男性・会社員・東京都)
【第1位】小泉純一郎(192票)
「政策についての是非はともかく、現状を改革するんだという信念と行動力はすごかった。今こそそういう人が必要」(40代男性・無職・埼玉県)
「発信力と決断力。今のふさぎ込んだ日本を変えてくれそうな期待が持てる」(40代女性・無職・東京都)
「圧倒的な人気を背景に少し強引なところがあったのは確か。しかしそういう強引さも、今の政治には必要ではないか」(40代男性・派遣社員・東京都)
「当時演説を聞きに行ったことがあるが、人を引きつける魅力がすごい。岸田さんに足りないのは、そういう人間的なところではないか」(50代男性・会社員・宮城県)
「党内の大反対も押しのけて郵政改革をやりきったのが印象的。信念を持ったことはやり通す。最近の総理大臣は周りの意見や世論でブレブレになりすぎる」(50代女性・会社員・神奈川県)
トップに求められるのは「強いリーダーシップ」「信念」「カリスマ性」ということのようだ。ちなみに小泉内閣発足時(2001年4月)の支持率は、読売新聞調べで87.1%など、戦後の内角としては歴代1位。なんとも隔世の感がーー。
第5位以下は、次のとおり。
【第5位】中曽根康弘(30票)
【第6位】野田佳彦(19票)
【第7位】橋本龍太郎(14票)
URL: https://news.yahoo.co.jp/articles/02ad5f64dd96b8e7f524d92b0903547665ee63f1
何とも空いた口が塞がらない。
しかし、この記事を取り上げた理由は、記事についたヤフコメの大半がネガコメだったことだ。下記はこれを書いている時点で最初表示される3件。
son********
小泉、竹中が日本の経済をぶっ壊した張本人なのにこの順位。郵政民営化も結局は外資にいいようにされただけ。マスコミの情報操作に国民が気付かないといつまで経っても日本の経済は良くならないと思う。
ybb********
民主主義というのは、正しい判断ができる国民がいてこそ、上手く機能するんですよね。
小泉にもう一度、総理大臣をやってほしいとか、日本国民は終わってますよね。非正規労働を始め、日本をおかしな方向に導いた最悪な人ですよね。非正規労働というのは、ヨーロッパでは違法なのはご存知でしょうか。
kzm********
日本は民主主義が機能する国なのか。国民が正常な判断ができないから、国がおかしな方向に向かうのであって、この記事を見ると日本の迷走は政治家だけの責任ではないように思える。
それぞれのコメントについては、小泉・竹中が最悪なのは当然だけれども、その先駆けにはサッチャーやレーガンがいてとか、フリードマンだとかさらに遡ってハイエクだとかいろいろ言えるだろうが、そんなことはもうこのブログを開設してから17年間ずっと書き続けていたことだから繰り返す必要はなかろう。
それよりも、SmartFLASHの記事に紹介された陳腐な「街の声」に対して嫌気がさしている人々が多いことがこれらのヤフコメから窺われ、それが現在岸田文雄内閣支持率を大きく押し下げている力なのではないかと思う。
一昨日に途中まで書いた記事で、今回岸田を動揺させた「増税メガネ」批判がエスタブリッシュメント層の周辺から来ているのではないかと書いたが、私がそう推測している理由は岸田があのあだ名に本気で動揺していることがありありと感じられるからだ。
あれがいつもの反政権層からの批判なら岸田は全く動揺することはなかった。それが大きく動揺したのはそれが「右」側からの批判であって、政権を揺るがしかねないと思ったからに違いない。そう直感したのだ。
ではなぜエスタブリッシュメントに近い層から「増税メガネ」批判が起きたのか。
それは、下層階級やそれより少し上の「中の下」あたりの階級からは、格差があまりにも拡大した現状ではもう搾り取れなくなっている現状で、次にやってくるのは「総動員体制」しかあり得ないことを彼らが感じているからだ。現に昨年岸田はドラスティックな軍事費拡大の財源として所得税や法人税の増税を口にした。
先の戦争ではその総動員体制によって貧富の差が大きく縮小した。それは日本にとどまらず全世界的に起きたことで、ヨーロッパでは第2次世界大戦以前に第1次世界大戦当時にもっとも劇的に起きた。それを具体的なデータで証明したのが2013年にフランスで刊行され、翌年に日本でも大きな話題になった『21世紀の資本』だった。
なぜそれと同じような事態が、戦争に直面しているわけでもない今の日本で起きようとしているのかというと、それがアメリカがもはや「世界の警察官」であり続ける国力を失いつつあるので、軍事費の一部を日本に負担させようとしているからだ。それを岸田は昨年、いとも簡単に引き受けてしまった。だから「戦争なき『総動員体制』」前夜のような現在の状況になっている。
これを「安倍さんが引き受ける口約束をしてしまったから」と言い訳することはもちろん可能だ。だが安倍が生きていたら、果たして自らが発した口約束を、岸田のようにいともあっさりと政策に盛り込んだりしただろうか。なんだかんだと理由をつけて軍事費激増を先送りし続けたのではなかろうか。私はよくそう思う。なぜなら、2007年に一度ひどい目にあった安倍は、二度目の政権運営では実に慎重に保身を図ったからだ。
安倍は劇的な軍事費増大の財源を「防衛国債」で賄うとの構想を示していた。これと響き合うのは「税は財源ではない」というジャパニーズMMT派が発しているらしい標語だ。だから安倍晋三に近かった新党くにもりの安藤裕と山本太郎とはきわめて相性が良く、山本は安藤を「総理大臣にしたい人」などと持ち上げていたという。だがジャパニーズMMT論には実績がない。
「税は財源ではない」という主張の大前提は国家の信用だが、それが危うくなっているというのが私の実感だ。ジャパニーズMMT界隈には近寄らないことにしていることにしているのでこれ以上書かないが、国の信用を支える産業、さらにそのうちの工業技術となるとこちらのフィールドであり、それが大きく傾いていることは紛れもない事実だ。つまり現在の日本は過去からの遺産によって「貧しくなった」と言ってもそれは先進国と比較しての話であってたかがしれていて現時点ではまだまだ国力があるといえるが、なにぶんにも先行指標*1があまりにも悪すぎるので、今後は雪崩を打って経済力が落ちることは目に見えている。そんなタイミングで岸田が軍事費の劇的増額を打ち出したものだから、私は驚き呆れた。そして主に9条平和論ではなく(ちなみに私自身は9条平和論の立場にも立つけれども)、それ以上に経済政策として絶対に間違っているという観点から岸田の軍事費激増政策を批判してきた。アメリカが失いつつあるよりももっと急速に、日本は国力を失いつつあるのだ。
私が世襲貴族の寡占を批判し、各人がそのポテンシャルを発揮できるあり方として「機会平等」を強く求める大きな理由の一つが、今後間違いなく襲ってくる日本の「国難」に対処するためだ。現在のように多くの人々のポテンシャルを世襲貴族の安逸のために押し潰してしまっているようではどうしようもない。国民一人一人も世襲貴族たちのようなごく少数を除いて不幸だし、国も大きく傾く。これではどうしようもないではないか。
以上の理由から、現在は何よりも「一人も取り残さない」立場に立つ「強い再分配」が求められる。各党の主張を見渡すと、立民「リベラル」派を代表しているらしい枝野幸男の「枝野ビジョン2023」が(消去法の結果ではあるが)もっともマシだと評価するほかない*2。減税真理教は論外だが、その論外に最近は志位和夫や福島瑞穂までもなびいてしまっている。また泉健太はあまりにも新自由主義側に逸脱し過ぎており、これまた論外だ。本当は、維新八策に大部分協調できるなどと一度言っただけでも泉をレッドカード退場させなければならなかった。このように確信する次第。
これでなんとか一昨日の記事の後編にできたかもしれない。本件はここまで。