kojitakenの日記

古寺多見(kojitaken)の日記・はてなブログ版

【特集】第26回参院選(2022年)立憲民主党――政権交代のプレリュード(三春充希氏のnote)

 今日は三春充希氏がnoteに公開した下記記事を取り上げる。

 

note.com

 

 これは有料記事だが、途中までは無料で読める。弊ブログのいつものやり方に従って、無料部分のみ紹介する。というより、今回の記事で紹介したい部分はほとんどすべて無料部分に書かれている。

 以下引用する。引用に際してグラフの引用は省略するので、興味のある方は直接上記リンク先をご覧いただきたい。

 

それは半年前に始まった

 

 今年の4月28日に行われた3つの衆院補選では、共産や社民などの支援を受けた立憲民主党の候補者が全ての選挙区で勝利をおさめました。このことをうけて立憲の支持率や比例投票先は上昇を見せています。けれどもそうした傾向は、実は補選の半年前から始まっていたことをご存じでしょうか。

 

(グラフの引用省略)

 

(略)2023年の後半に(立憲民主党の=引用者註)政党支持率のトレンドが上昇に転じていたことが読み取れます。このことは比例投票先ではさらに明瞭です。

 

 半年前から起きていたこの上昇は何に由来すると考えられるのでしょうか。

 

略)第49回衆院選(2021年)から第26回参院選(2022年)にかけておきた下落は、与党への批判や対決から政策の提案にシフトするという、いわゆる「提案路線」の失敗を物語るものです。

 

 第26回参院選(2022年)から1年あまり、立憲の支持率と比例投票先は低迷が続きました。それが上昇に転じた2023年10月は臨時国会の召集と重なります。国会の閉会からお正月にかけては微減となりましたが、通常国会が始まると再び伸びに転じ、予算の審議と採決を経て、衆院補選でさらに一段高い水準となっています。

 

 もっとも従来は、たとえ国会の会期中とはいえ、立憲の支持率や比例投票先が一概に伸びてきたわけではありません。図2からも、2019年から2023年の前半までは上昇と下降が混在していたことが読み取れます。それでは、なぜ今になって状況に変化が生まれたのでしょうか。

 

野党の前にあらわれた「新しい状況」

 

 次に自民党の支持率と比例投票先を示しました。主な下落が2023年の後半に起きていることに注目してください。

 

(グラフの引用省略)

 

 第26回参院選(2022年)以降、旧統一協会との関係などをめぐって自民党は信頼を失ってきました。けれども2023年の5月の時点で、その支持率と比例投票先は平均35%あり、これは過去にも見られた範囲の下落だといえます。しかし2023年の後半には、その水準を10ポイントほど割り込む下落がおこりました。これは自民党の政権奪還(2012年12月)以降で例を見ないような事態だったのです。

 

 ここで有権者の動きを考えるとき、支持率が変化していないということは、支持者そのものが変化していないことを意味するのではありません。あくまで支持をやめていく人と、新たに支持をはじめる人が同じ数だけ存在し、つり合っているということです。こうしたことは科学では平衡状態と呼ばれます。条件が変わってつり合いが崩れると、以前の平衡状態は新たにつり合うところまで変化していきます。政治では、時事的なできごとをうけて、支持をやめていく人と新たに支持をはじめる人のつり合いが一時的に崩れ、再び安定するまでに数週間から数か月ほどを要したのち、新たな平衡に到達します。支持率の上昇や下落は細かく言えばこのような現象です。

 

URL: https://note.com/miraisyakai/n/n263713183672

 

 このように、人間社会における有権者の政治的判断の統計的挙動を物理学の用語で説明するあたりは、さすがは理学部物理学科卒の三春氏らしい。

 ところで、2023年後半にこのような大きな変化が起きることを、弊ブログは2023年5月15日に公開した下記記事で予測していた。手前味噌ながらそれを紹介する。

 

kojitaken.hatenablog.com

 

 このように、立民と共産がともに自滅している状態で、かつ今後の数年間は時期が遅くなればなるほど政治への不信が強まって内閣支持率自民党支持率も再び低下に転じる可能性が非常に高く、そうなれば今後はなかなか上昇できない、というより上昇することはほとんど望めない、というのが現在の日本社会の状態だと私はみている。

 

URL: https://kojitaken.hatenablog.com/entry/2023/05/15/085033

 

 弊ブログはそのさらに前の2022年10月には既に自民党の長期的な党勢衰退を予測していた。その3か月前に起きた安倍晋三銃殺事件が「玉手箱を開いた」とみたのだ。

 

kojitaken.hatenablog.com

 

 安倍晋三の銃撃死のタイミングで、日本社会は浦島太郎の玉手箱を開けたようなものだと私は考えている。これまでの虚飾の一切が急速に剥がされつつある。統一教会の問題も、同教会が資金繰りに破綻して政界への影響力を失うまで続く。自民党右派は今後何をアピールするかを必死に模索している。

 

URL: https://kojitaken.hatenablog.com/entry/2022/10/18/090250

 

 自民党(極)右派が手を染めそうな政策の一つが「減税真理教」だと当時私は診断し、現在も同じことを考えている。これは典型的な「小さな政府」の新自由主義政策なので当然のように維新も乗るだろうし、下手したらそれに乗りかねないのが山本太郎(と元号新選組)だとも何度か書いた。それに対して立民がやりかねないのが岸田文雄宏池会との野合であって、こちらも十分すぎるほど有害だと私は思うのだけれども、こともあろうに都会保守のブログ種が運営するブログ『日本がアブナイ!』などはそれを待望さえしている。まあこれは余計な話だ。

 三春氏の記事からの引用に戻る。

 

 2023年の後半に自民党の支持率と比例投票先が大きく落ちたことは、与野党の平衡に変化を与えました。しかしながら、与野党の間に無党派層がバッファ(緩衝となるもの)として存在することにより、この変化には一定の遅延が生じます。つまり、与党の支持率の低下はまず無党派層の増加となり、次に増えた無党派層が野党に関心を持つことにより、野党の支持率の増加をもたらします。これまで多くの論者が「与党の支持率が落ちたとはいえ野党が伸びているわけではない」という主張を繰り返してきましたが、このタイムラグにより、そうした誤認が起こるのです。

 

 無党派層が野党の支持へと転化するのは、それに値する何らかのアピールポイントがあった時にほかなりません。国会や補選が鍵となったのはこのためであると考えることができます。したがって、この新たな局面の中で、国会などの野党の活動を広く有権者に伝えることがいっそう重要になってくるといえるでしょう。

 

議員の闘いを、支え、伝える

 

 あらためて図2を見ると、第49回衆院選(2021年)から第26回参院選(2022年)までの立憲の後退には厳しいものがあったと言わざるを得ません。この後退は、与党への批判や対決から政策の提案にシフトするという、いわゆる「提案路線」の失敗と無関係ではなく、その結果として無党派層の票を大量に失い、一人負けの状態になったことをPART1の分析で論じました。この記事ではそうしたことを強く批判していますが、今となって図2の推移を見れば、支持というのはこのように動くのだという現実を伝えたかったことを多くの方に理解してもらえると思います。

 

note.com

 

URL: https://note.com/miraisyakai/n/n263713183672

 

 2022年参院選での立民の惨敗に関する三春氏の分析を弊ブログも紹介したことがあるが、当時立民惨敗という事実を直視できた立民支持者はほとんどいなかった。一度呆れたのは、立民の敗因を現Xで「アクシデント」と片づけた立民支持者がいたことだ。

 冗談じゃない。数千万人の(10の7乗のオーダーの)有権者が投票した結果が「アクシデント」、つまり「偶然や不慮のよくない出来事*1と片づけられてたまるか、偶然そんな結果になる確率がどのくらいだと思っているのかと思った。この手の支持者は「信者」というほかない。何も陰謀論を何の疑いもなく信じてしまう人たちばかりが「信者」ではないのだ。何千万人の人々がなした投票行動の結果を「偶然」と片づけることしかできない人たちだって「信者」との蔑称を受けることは免れないのである。

 今回の補選での立民全勝や政党支持率の上昇は、一昨年から昨年にかけて泉現執行部下で立民が経験した比例票の大量流失や政党支持率低迷、昨年春の補選での立民の4戦全敗の原因を直視できる人でなければ合理的に説明することはできないはずだ。そして、惨敗と躍進の両方の説明ができなければ、勝ち続けられる組織には絶対になれない。そんなことはあまりにも当然だろう。

 下記は無料部分の終わり近くからの引用。

 

 政権交代を望む層が多くなりつつある一方で、いまの野党に期待できないという回答もまた多いのです。けれどそうした人の中にも「期待できないが、こうなってくれれば」と思っている層がいるはずです。

 

 立憲はすでに一定の支持の拡大に成功したといえますが、それに上積みしていくためにはどうした姿勢が求められるのでしょうか。ここで参考になるのが日本維新の会の現状です。

 

 この一年ほどのあいだ、自民党の支持率が後退するなかで、なぜ日本維新の会は伸びるどころか低迷の一途をたどっているのでしょうか。その要因には万博の不振も挙げられるかもしれませんが、最大の要因は自身を「第二自民党でいい」(馬場代表)などとして、自民党への批判を欠いてきたからです。批判するべきものがあるのなら、批判しなければ支持は得られません。

 

 やがてくる衆院選にむけて緊張が高まっていく中で、いまだ高水準にある無党派層や、投票先の未定層が何者につくのか、判断される時が来るでしょう。自民党の支持率や比例投票先が低迷する現状からは、現在の与党への批判層がかつてないほど膨れ上がっていることが示唆されます。立憲は野党第一党としてそうした票を最も取り込みやすいポジションにいるのですから、自民党に対する明確な対立軸を打ち出していくことがいっそう重要となるでしょう。

 

URL: https://note.com/miraisyakai/n/n263713183672

 

 泉健太は、ちょっと補選に勝ったくらいですぐに気を緩めたのか、富士山登山を巡る右翼は意外主義的なXをポストするなどして批判を浴びているようだが、既に立民が上潮に乗り始めていた「半年前」すなわち昨年11月の段階でまだ「ホップ、ステップ。5年後の政権交代を目指す」などと悠長なことを言っていた。その間、広島では千葉県からのリベラル系落下傘総支部長を「立民広島の独裁者」であられるらしい泉グループの参院議員の圧力があったかどうか、無名の保守系(?)人士に差し替える内向きの人事を発動していたと聞く。これなど、衆院選を戦う上ではむしろ不利な話ではなかろうか。

 それらすべては、秋の代表選で問い直されるべきだろう。真剣勝負の代表戦を望む。